つい、うっかりと
地下牢特有、なのかどうかは、初めて見るから判らないけど、いかにもな感じに薄暗く、湿度の高い、石剥き出しの部屋が、左右にズラリと並んでいた。
明かりは豆電球みたいなものが、まばらに灯っているだけ。
暗いせいで鉄格子の奥は全くの闇で、中に誰かいるのか、さえ判らない。
外の兵士も、リナさんの牢の場所までは判らなかったので、僕らは静に左右を見回しながら歩いていった。
この城の地下部分は、もしかすると上の城より、ずいぶん古い時代のものかもしれない。
石の積み方とかが荒いし、通路も広くなったり狭くなったり、稚拙さも目立つ。
そんな地下牢の通路を、右によれ、左にぶれながら進むと、
「歌だ!」
とマクルが叫んだ。
「そうだ、リナがよく歌っていた曲だ!」
リヌも足をはやめる。
僕は、なんか嫌な予感がした。
他の人の声なんて全然聞こえないのに、リナさんの声だけが都合良く聞こえる、って、おかしくない?
マジックのリストを見ると、魔法破壊、というのがあったので、使ってみた。
歌が消えた。
「あれ…」
とマクル。
「注意して。
あの歌声はマジックだったみたいだ」
「ええっ!」
僕は魔法破壊をかけたことを教えた。
話ながら、僕はリストを調べていた。
マップ表示?
ゲームとかの便利機能と同じだろうか?
とにかく使ってみた。
広い地下マップが現れ、現在位置と、歩いた経路が示された。
それだけかな、と思ったが、何か検索もできるようだ。
試しにリナ、と入れてみた。
斜め左上に、赤い光点が現れた。
ついでに、敵、と入れると…。
そうだよね…。
魔法を使って待ち伏せているぐらいだもんね。
そもそも、最初のスピン教徒を、どこかに隠すとか、しないといけなかったよね…。
リナさんの周りは、ズラッと敵が囲んでいた。