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新しいマジックは、いつだって
周囲がボロボロのアパート群だから、その建物の巨大さと物々しさは際立って見える。2階建ての家屋から突き立てた塀が周囲を威圧し、さらに高い望楼が、全てを監視している。
まだ僕は、この町の警察機構がどの程度か、軍がどうなのか知らないが、普通に考えると、これは宗教団体ではなく軍事組織だと思えた。
僕は、そのまま、くるんと回転して帰って寝よう、と思ったが…。
なぜかデバイスのマジックリストを調べてみた。
何度かリストを見ていて、ちょっと気になるものがあったような…。
あ、この、潜入、ってやつだ。
透明になり、足音も消え、魔法的探知にも引っかからない、と僕が覚えている、便利なマジックだが、実際どの程度のものか、試したい、って思ったんだ。
だが…。
ここで使って、もし、しょっぱい力だった場合、命に関わる。
僕は、うーん、と唸りながら迷っていたが…。
なんだか、急に、道の先がザワザワしてきた。
おい! 誰だ!
とか、叫び声がして。
そっちに逃げたぞ!
と絶叫が聞こえた。
僕は思わず、迷っていた潜入、を使っちゃっていた。