もう少しでレベルアップ
僕は、よく狙い、スリングショットを撃った。
スリングショットの射程は、だいたい50メートルだ。
小さい敵なら、もっと近づかないと厳しいがエビマンゲツなら大丈夫。
僕がワイヤーを離すと、石は微かに発光しながらエビマンゲツに突き刺さった。
いわゆるマジックポイントを幾つか消費して撃つ、溜め撃ちというやつだ。
どぅ、と体液を撒き散らしながら、エビマンゲツは落下した。
僕は駆け寄ると、腰に下げたナイフで、さっそく甲虫の頭を切り落とした。
虫は馬鹿なので、死んでも噛みついてくることがあるのだ。
初心者は、それでよく指を切断したりする。
だから、まず頭を切り落として、踏み砕くのだ。
バリッ、と軽い音がして、甲虫の頭は砕けた。
それでも、まだ顎は動いているのが恐ろしい。
それから胸甲板、背甲板を外し、足も関節で切り落とす。
そこまでしたらーー。
手首にはめたデバイスを起動し、エビマンゲツを転送する。
即座に僕のデバイスに2万千円が振り込まれた。
デバイス。
それは、魔法的に構築されたスマホのようなもので、転送がつかえるために、町では鮮度抜群のモンスター肉が手に入るし、僕らはキャッシュが手に入る、ってわけ。
もう、ちょっと言うと、デバイスとは、まず第一に僕らの認識証であり、これがないと町に入れないし、ギルドに所属できない。
デバイスを持たないノラは、デバイスを奪うために襲ってくることもあるが、デバイスを持たないと言うことは、戦っても経験値が上がらずレベルも上がらない、事なので、レベルは生来の、せいぜい3とかだから、余程、裏をかかれない限りは負けることは無い。
そうそう。
デバイスにはレベルやパラメーター、状態などが記録されていたんだよ。
ちなみに僕のレベルは15、パワーは515で平凡だが、敏捷は、なんと777で、かなり高く、精密動作も720あるので、スリングショットなどの射撃全般は向いている。
あー、やっぱり次のレベルアップではパワーを上げたほうがいいんだろうけど、個人的には身長の157とかを少し弄りたいし、ルックスのパラメーター500は本当の平均なので、せめて600台にしたいんだけどなぁ…。
どこかにパラメーターUPの宝玉でも落ちてないものか…。
噂では、イケメンで有名なナリタドームも、実はダンジョンで特大宝玉を拾って大幅にパラメーターを上げたのだとか…。
だから僕だって…。
思って、僕はデバイスの、もう1つの機能を思い出した。
個人情報だ。
さっそく見てみるとーー。
名 ウラガスミ
年齢15
パワー515
タフネス692
スキル999
敏捷777
精密動作720
ルックス500
身長157
体重42
だったーー。
あ…。
そうだ。
デバイスに登録するのは好きに付けたハンドルネームなので本名ではない。
え、と、確か、本名も、似た感じだったハズなのだが…。
思い出せない。
デバイスによると、今の戦闘で62の経験値が手に入り、次のレベルアップまで、あと20らしい。
おー、ついに僕もレベル16になるのか…。
今日は、どうも、まだ午前中のようだし、やはりレベルを上げてから町に帰りたいな。
だが、どうして戦っているのかは、今も判らなかった。