騙されるな!
安心して、すっかりお腹の空いた僕は、真っ先に広場にある食堂に向かった。
大きなカウンターで好きな物を選べる、セルフの食堂だ。
僕は、この世界に来て日も浅いので、毎日、本日のおすすめ、を食べることにしていた。
今日はイコペッティのフライ、それにトマトと豆の煮物、だ。
トマトの煮物にはタルカという名があり、たぶんトマトも豆も入っていないが、僕は味が一緒なので、トマトと豆の煮物、と呼んでいる。
この世界の主食であり、イオと言うチーズをかけたり、ネギ的な物をかけたり、味を替えて、毎日、食べている。
日本で言えば、白米であり味噌汁、みたいなものだ。
イコペッティが何なのか、は、ちょっと判らなかった。
かなりスパイスの効いた肉をフライにし、味の濃い酢をかけた物だった。
テーブル席はグループ客で占められているため、僕は奥のカウンター席に座った。
僕の他には、離れて1人、女の子が座っているだけだ。
あれ。
あの子って…。
僕に布切れを渡してくれた子じゃないかな?
僕は思い出し、ポケットから布を取り出した。
おかしいな…。
触っても記憶がよみがえらない、ってことは、これは僕のものじゃないんじゃないかな?
思いながらも、僕は布を広げた。
ーー騙されるな!
真実は、巧妙に隠されているーー
そう、布には書いてあった。