期待の上乗せ
「・・・。」
それはどこにでもある段ボール箱であった。拾ったのはつい先日、僕が川の畦道を歩いていたら偶然あった。中身は見えないように閉じられており、ガムテープで固定されている訳でもなくただ段ボールを交差させて閉じられているようだった。この事から人の手が入った物だということが想像出来る。では何が入っているのだろうか?いや、もしかしたらブービートラップというもので誰かを罠に嵌める為の物なのかもしれない。だからといって興味が削がれる訳でもない。少年誰もが好奇心旺盛なのは世間一般的にも理解できるだろう。持っていこう。
「持ってきたは持ってきたけど・・・。持った時に重さはそんななかったんだよね。捨てたのかな?」
だとすれば何も入れずに捨てるというのはおかしい。捨てる時はちゃんと折りたたんで資源ごみに出して欲しいものだ。考えられる事は幾つかある。一つはブービートラップ、重量は軽量しているのだろう、交差した紙を広げようとした瞬間に指を挟む、特殊なペンによる電撃といったやんちゃな人であれば仕掛けるかもしれない。二つ目、軽いということもありもしかしたらお金が入っているのかもしれない。紙同然の紙幣であれば重さも感じはしないし小銭のような金属音も鳴らないだろう。後者であれば警察に届けようか、届けている最中に仲介人のような怪しい人物に狙われないだろうか・・・。祈るばかりだ。
「取り敢えず・・・開けてみようか。」
恐る恐る交差された段ボールの紙を剥がしていく。どうやら前者のブービートラップではないようだ。だとしたら後者の可能性もなくもない。それとも別の何かか?
段ボールの中身が見えた瞬間視界に何かが飛んでいくのを目の当たりにした。生き物が入っていたのか! だとしても重さは全く感じることはなかった。哺乳類の可能性は皆無、昆虫であれば羽音が鼓膜を震えさせる。では、何が視界に入った?
「・・・。」
声を押し殺し今自分がいるところを再確認する。ここは自宅で二階にある自分の部屋。家族は下の階で談笑している。扉は鍵を閉めているので下へと何かが行くことはない。故に何かは自分の部屋のどこかに潜んでいる可能性が高い。押入れか?本棚の隙間か・・・。机の下にもいるかもしれない。自分の部屋で隠れられそうな場所を目配せしながら思慮する。それに何かはどのくらいの大きさでどこに隠れられるかもわからない。さて困った、動けば反応して移動してくれるだろうか?いや、彼奴は自分の行動を観察するために広く見渡せる場所に隠れているだろう。遮蔽物によって視界を多く取れる場所、本棚の隙間・押入れ・机の下・・・。ひょっとすれば照明の裏という裏をかいた場所にもいる可能性もある。ならば、相手の逆をついて照明の裏を探せば居るかもしれない!幸い机と椅子からの距離は手を伸ばせば届く所にある。狭い部屋であってよかったと思う。
「どこにいったんだ?」
敢えて、至る所に視線を配りながら椅子に手を掛ける。身体も少しは動かさなければ彼奴に感づかれてしまう。では、もう少し大胆にいってもいいかもしれない。感づかれる前に照明の裏を見る!
並々ならぬ速さで椅子を照明前にセッティング! 倒れないように椅子の上に立ち上がる!見る!
と、ここまでは子供の俊敏さを見せた所。肝心なのは段ボールの中身が居るかということである。
「ひっ…。」
悲鳴を上げたのは自分ではない。照明の裏に居た何かであった。それは人の形を成しており、人語を話せるようだ。照明の裏に人がいたということにも驚きだが、照明の裏に床面からどうやって移動したのか、そして人のサイズとして常軌を逸していることに二度驚きだ。
「いじめないで…。」
人の形をした者は少女の声を発しており、性が雌であることは確かだ。これはもしかすると、もしかするのかもしれない。
「大丈夫、いじめたりはしないよ。降りてきてよ。」
「・・・うん。」
妖精? ふと過ったのはお伽噺やゲームの中に登場する妖精では? 容姿もどことなくゲームの中に登場している妖精に似てなくもない。本物かもしれない!
「ほんとにいじめないよね?」
「僕はそんな人間じゃないし、いじめて面白いとは思わないよ。」
「それって無関心ってこと?」
「君には興味はあるよ。だって僕が拾ってきた段ボール箱から出てきたんだもの。」
本当はお金が入っているのではと少し期待していたのだが、生物でしかも空想上の妖精に対面できたのだからお金などに期待していた自分が馬鹿である。
「それで…。君の名前は?」
「サーシャ。君は?」
「僕は隼。」
これがサーシャとの出会いであった。
作者のKANです。今回はちょっとした連載に挑戦しようと思い、勢いで投稿させていただきました。連載としてはあまり長くはしない予定であり、なるべく短くきりよく完結させようと思います。
これからもよろしくお願いします。




