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死んだら、転生したわけでもないのに、神がいた。  作者: 暇太郎
そして悪は復活した。
18/19

不撓不屈

 俺はどうしたんだ?

 手が崩れて、ユリカの声が聞こえて――そこから覚えていない。

 辺りを見渡す。

 真っ暗だ。

「電気、電気」

 刹那、光が目に飛び込んできた。

 眩しい。

「翔、落ち着いて聞いてくれ。天界側が悪いことなのだが、『悪』が復活してしまった」

 目が慣れて、背景が視界に広がる。

 ユリカと黒服に身を包み込んだ女性――そして、脳。

 その脳の傍に置かれているのは、四角いディスプレイ。

「悪?」

 悪魔が説明していた奴か――確か、悪の復活は世界の滅亡を指すと。

「え、それってやばいことなんじゃ」

「やばいって話じゃない。あの手は半悪魔化した人間の大結集だ。何処から攫ってきたか知らんが――悪魔が大量の人間を仕入れたらしい。そして、それを殺してしまった。そして、悪は復活する」

「どうして? なんで俺が」

「大神が君に話があるらしい」

「こちらの画面をご覧下さい」

 ユリカに変わって、黒服の女性がディスプレイを指さす。

『キミの力に目をつけ、私からお願いしよう。君の力が必要だ。私は大神――もう力のない。老いた爺だ。だからその力を君に託そうと思う』

「俺に?」

『私と波長が合うのが君しかいないのだ。私は自分の身体で制御できない。しかし、悪に対抗できるだけの力はまだ秘めている。だから――君に託す』

「口づけを」

「へ?」

 黒服の女性が無機質に言う。

「大神様に口づけを」

「はい?」

「口づけを」

 黒服の女性は少し苛ついているのか、目がぎらりと光った。

「はい」

 気迫に圧されて、俺は返事してしまった。

「ユリカ」

 助けを乞うが、真剣な表情(かお)で返された。

 やらんきゃいけないのか?

 ん? 待てよ。

「本体がないじゃないか。脳はあるけど」

 ガララ。

 奥から担架で何かが運ばれてきた。

 きちんと用意されてる――!



 思い出したくない。

 思い出したくない。

 あのつめたさ。死体に接吻したということよりも、あのおじさんのかさかさした唇に触れたということ――。

「え」

 なんだ?

 身体の内が火照って。

「あああああああああああああああ!」

 痛い痛い痛い。

 痛みが。

 身体の中で何かが暴れている。疼いている。

 スーパーボウルのように跳ね返って跳ね返る――そんな不安定な動きが身体の中で――。

 ――――あ――い――こえ――な――。

 お――。

 し――し――し――。

「翔、大丈夫か?」

「あああああああああ!」

 ――。

 


 俺はどうしたんだ?

 俺はどうしたんだ?

 手が崩れて、ユリカの声が聞こえて――そこから覚えていない。

 辺りを見渡す。

 真っ暗だ。

「電気、電気」

「翔」

「ユリカか? 電気つけてくれ」

「ああ」

 眩しい。

 そうだ。俺は大神にキスをして――それから、どうしたんだっけ?

「君は耐えきった。大神の力に耐えきった。あとは『悪』を倒すだけだ」

「悪? ああ」

「いいか? 『悪』を倒さなければ大勢の人が死ぬ。大神はもう君に力を与え、ちょっとの力も残っていない。精々、住人を何処かへ飛ばすことしかできない」

 君だけが頼りだ。

 ドオオオオオオ。

 ユリカの声とその響くような音は綺麗に重なった。



「『悪』が復活する」

 その男は盲腸を外に晒しながら言う。

「私の役目はここで終わりだ。あとは大神の破滅を待つだけ。死んだらどうなるのでしょうね」

 その声は誰にも聞こえない。

 もう誰も居ない。

 皆、死んだ――殺された。

 男ももうじき死ぬ。

「ふふふ、楽しみだ。ただ、残念だ。大神の死ぬところを見れないのだか――」

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