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現人神

「北海道が消えてるぞ」

「悪魔の仕業だ」

 ユリカは神妙な顔つきで言う。

 因みに、リンは隣の空き部屋に住んでいる。

 金は大神から特別に支給してくれるそうだ。配属する死人が居ないので、一応、俺の隣にサポート役としているのだとか。

 それを聞いて、ユリカは少し厭そうな顔をした。



「悪魔の仕業?」

「ああ、翔! 行くぞ」

「何処にだよ」

「海だよ。馬鹿もの」

 そんなこと言われたって、俺が知るわけないだろう。

「海に行ってどうするんだよ?」

「君を海に放つ」



 よく意味が分からなかったので――いや、正直なところ分かりたくなかったので――俺は黙ってついていくことにした。

 状況を理解できないまま、俺は何処に連れていかれるのだろうか。

 叫ぶと五月蠅いので、俺は目隠しをしたまま暗の中、風を受けていた。

 しかし、暗闇の中で外側は空の中だと思うと、余計に怖い。

「おおおおおおおおおおおおっ! 今、何処だよ? もしかして、海の上にいないだろうな! おおいっ」

 呼びかけても、神は応答しない。

 手を二つ掴まれて、空中にぶら下げられ、更に俺は目隠しをされている。

 特殊なプレイか何かか?

 空中なんて遣り尽されてる!

 なんてことを考えているんだ、俺は。

 同様で頭の中の糸が絡まって、自分が何を考えているのか分からなくなってくる。

「翔! 目隠しを取るぞ」

 刹那、俺の重心が左に寄った。どうやら、神は俺の右手を離したらしい。

「おおおおおおおおっ! いきなりやめろよ!」

「いくぞ!」

 目隠しが外され、催促するような声が聞こえたかと思うと、俺の体は落下した。



 下を見ると真っ青な海が広がっている。

「ええ? ええ? えええええええっ! やべっ! やべええ」

 下から押し寄せる突風が俺の髪の毛やら、服やらを攫おうとする。

 真っ青だ。

 所々に白が混ざっていて、それにつられて青が動く。

 ザバアアア。

 その一律した動きが阻害された。

「は? はい?」

 馬鹿デカい手によって。

「マジかよ」

 俺の真下に大きな手が現れた。正確には大きな手のひらである。

「やべえええええええええええええ」

 そんなことしている場合でないことは分かっているが、手の平に誰かいる――しがみ付いている?

 人だ――見えたところで、手の平の上に行きついた。

「でけえ」

 指が遠くに見える。

 なんだこれ?

 まさか、これが北海道を?

 しかし、そう言われたら納得できる。

「これ、どうやって倒せばいいんだ?」

 俺は首を傾げた。

 ビュオオオオ。

 変な音がしたので、上を見上げると指が雲を巻き込みながら此方に迫ってくる。

「やべえええ!」

 俺は出来るだけの力で、地面――いや、手の平を蹴った。

 雲の中に紛れ込んで、大きな手を俯瞰する。

「おい! 空中に居る連中! 聞こえたらなら! これから言うことを実行してくれ! 手に向かってパンチを放ってくれ! 落ちる力を利用して思い切りの力をあいつに当てるんだ!」

 雲の向こうから声が聞こえた。

 風に抵抗しながら、俺は頭を手へと向ける。

 そのまま、俺は地球に従うように落下していった。

「うおおおおおおおおおおおおおお」

 迫り来る手の平――それはもう恐怖でしかない。

「うおおおおおおおおおおおおお!」

 ドドドドドドドドドド。

 拳と手のひらが合わさる。

 ドドドドドドドドド。

「やめろおおおおおおおおおお!」

 後方から複数の声が飛んでくる。

 いとも簡単に大きな手は弾けて、今度は真っ青の海が露わになる。

「それは人間が集まってでき――」



「数億人もの半悪魔化した人間が死んだ。自動的に魔界に還り、洗浄され、淘汰され、それは――」

 男は不適に微笑む。

 そして、生首だけの男を見つめた。

「復活する――『悪』は。いっひっひっひ」


 復活まで三日。

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