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死人とクチナシ〜死を悼む日と11の詩篇〜

玉蘭に散りにけり

 軍刀(けん)に溺れ果て、錆びる留金。今凭れ掛かる革の椅子。

 鞘より放てば散れる雨音(アマネ)の、君と音無(オトナシ)。夏の(コウ)

「在りし日々の君の背姿に流星を」

 想ひ返して染まる鋼の、きらむで散りぬるを。


 弓と張る月、唄ふ鈴虫。思フ侭走った墨のあと。

 名は轟けど空の(サカズキ)。時代は移れど、君の影。

「在りし日々の君の横顔に彗星を」

 酌み交わして触れる指先。忘れてなるものか。


 駆けめぐる夢と荒野(こうや)、馬の背に崩れたら。

 茜射した道半(みちなか)ば途絶えた友人の。

 名を叫べよ。その残り火に。

 無性に。縋りつけたら。


 若かりし日々への手向けに。花を介して。

 肩を並べる野暮を許せよ。

 と。

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