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なりゆき任せの戦国生活  作者: ハナヒル 
4/8

『生きていくだけでも大変な世の中みたいだけど、 何とかなるよね。』 三

うぉぉ。

目指せ週一投稿なんて、どだい無理でしたー(汗か涙)


今日気付きました。アクセス数とかの見方。

予想より遥かに多い数のPV数に驚きです。どうやってここに辿り着いたんだろう…

兎に角も閲覧、ありがとうでした(もう来ないだろう的な)


「して、この者は何者なのです。」



朝である。朝のようである。

頭の上から降ってきた声に意識を覚まされて目を開けてみると、外からの陽が入り込みすっかり明るくなった部屋が見えた。

一晩で変わる筈もないので当たり前だけど、やっぱりガランとして何もない、殺風景な部屋がある。


「いやなに、夜分に庭で濡れた衣を纏って難儀しておっての。不憫じゃから、一夜の床を貸してやったのじゃ。」


背中の方からおっさんの声。

さすがにこんな独り言もないだろうから、誰か居るのだろう。

寝起きの良さは自慢の一つ。ボクはむくりと起き上がる。

声のした方へ顔を向けると、着崩した着衣の胸元に手を突っ込んでぼりぼりと体を掻いている中年一名。

まだ起きてから間もないようで、大きなあくびをした。

そして、おっさんの傍に綺麗な姿勢で座る女性が一人。

慌てて正座して、取りあえずぺこっと腰を折る。

頭を下げながら、今見たものについて考える。

凄かった。何が凄いって、なんかもう色々と。

まず、顔、というか眉毛。無かった、眉が。いや、有るんだけど無かった。

支離滅裂かもだけど、間違ってはいない。寝起きな上に見たもののインパクトがありすぎて混乱しているのも確かだけど、やはり間違ってはいない。

眉はない。でも眉の位置にでっかい黒豆みたいな眉がある。描いてあるっぽい。

かの有名な、麿眉というやつだ。麻呂眉か?いや、字面なんてどっちでもいい。マジか。リアルで初めて見た。うおお、マジですか。

実際に目の前にすると、凄い衝撃だ。ぶっちゃけ違和感しかない。

撮影現場でも麿眉の人達は幾人もいたけれど、皆メイクだった。こんなマジもんは居なかったよ、当たり前だけど。

違和感を大きくしてる理由の一つに、麿眉なのに顔が白くないのだ。白塗りされてない普通の顔に眉なし麿眉。

いやまぁ、白塗りはテレビだからこその誇張なのかもしれないけど、あれに慣らされた身としては、ノーメイクにこの眉は…。

この女性がおっさんが昨夜言ってた奥さんなのかな。だとしたら奥さんに何させてんだ、おっさん。

それとも、奥さんも好きでやってるんだろうか。


「○○町の四方のハルといいます。お邪魔させていただいてます。」


頭を下げたまま、ご挨拶。思いっきり寝こけてるところを見られたみたいだけど、そこはそれ。だからこその第一声のご挨拶は大事なのだ。

しばらくそのままで居たけれど、なぜか反応が返ってこないので、目線だけこっそりあげてみる。

う、目があった。すんごい興味深々な様子で見られてる。

改めて頭を下げ直す。そんなつもりは無かったのに、自然平伏と言われる体勢だ。

なんだろうこの女の人。威圧感はまったくないのに圧力が凄いよ。


「外に干されておった衣を見ました。今のこの様子も見るに、下賎な産の者という訳ではないようですが。」


女の人の声が頭を下げた先からやってくる。

うーん、優しそうな声の人だなぁ。あ、目覚ましの代わりになった声、この人のだ。声は優しげなのに、すごい元気溌剌とした感じ。不思議な人だ。


「それといえど、氏素性の知れぬ者を傍に近うさせるなど。あまつさえ、褥を供になど。何をお考えあっての事でありましょう。」


呆れてものも言えないわ。そう、あからさまに言外の声というやつが聞こえてきそうな口調だ。

それと、丁寧なんだけど、近しい者への気安さが滲んだ感じ。あと、口調は嗜めてる風なのに、わくわくを抑えきれない、みたいな弾んだ声。

いやほんと、なんだこの人。


「見てのとおりの者じゃ。幾言か交わしたが、問題なさそうなのでの。まぁよいか、と。」

「確かに、かように()い幼な子が聞き及びましたる様子で現れましたら、主上のなさりようのお気持ちも理解出来ようものなれど。だからこそ怪ぶんでほしゅう処でございまするぞ。さような刻限にかような場所に、このような者がおるなど、妖しの類のようではありませぬか。」


大雑把な事を言うおっさんに、小言で返す麿の人。女性の場合も麿って呼ぶのかな。

奥さんまでこの言い回しか。やはり似たもの夫婦なんだろう。なんというか。

てか、幼な子って…。

妖しって、妖怪とかのあのあやかし?田舎の人にしても、今時そんな。

あと、何だか妖しであってほしそうな印象を受けてう声色なのだけれど、気のせいか。


「妖しの類にしては、あまりにも邪気が感じられんしの。そういった者ではあるまい。」

「さりとて、如何様な素性な者か知れぬのでありましょう?妾であったから良いものの、他の者であれば、今頃は大騒ぎになっておりましょうぞ。」


嘆息、とはまさにこんな感じに吐くのだろう声音、というのではない。

どちらかと言うと、騒ぎが起こらなくて残念だったって声。

あ、この人あれだ。騒ぎ事大好き系の人だ、多分。

てか、そろそろ頭あげてもいいのかな。


「兎も角も、其のほう、許す。面をあげよ。」


タイムリーに掛けられた言葉に従って頭をあげる。

すると、改めて視界の正面に女の人がおさまる。

う、うーーーん。

やっぱり麿眉♪

いや、そうじゃなくて。そこだけじゃなくて。

改めて凄い。眉じゃないよ?他も凄いんだよ。

まず、えらい別嬪さんだ。やわらかな顔立ちなのにシャープな印象。いるんだな、こんな人。化粧はまったくしていない。この眉は化粧に入るのかな・・・。

お歳は・・・うーん。30歳には届いて無さそうに見えるけど。

スタイルはわからない。なんでかというと、うん、まぁ、お召し物だ。これがでらすげーぜよ。思わず方言が混ざるほど驚かされたぞな。

あれだあれ、すんごい鮮やかな色合いの、 十 ・ 二 ・ 単(じゅうにひとえ) !

いやもうなんてーか、表面積でかっ。撮影現場でチラリと見たことあるけど、こんな間近で見たのは初めてで、インパクトがもう。

ものっそい重そうなんだけど。着てるだけで疲れそうだけど、大丈夫なのかな。

そしてトドメが歯。お喋りあそばした拍子にちらりと見えたんだけど、黒い、黒いぜ、真っ黒だ。

お歯黒の知識はあったけど、直に見るのは勿論初めて。いやぁ、どえりゃーいいもん見たずら。

美人さんのお歯黒は、マジで色々すげーぜ。


「ふむ、やはり愛い幼な子よの。はると申したかの。四方とは聞かぬが、御所にふみ入る事(かの)うたのであればそれなりの家の子であろう。例え童といえど、主上と褥を共にしたなどと誰ぞに知られれば、大騒ぎじゃ。話が大きゅうなる前にここを出たほうが良い。誰ぞに案内(あない)させるゆえ、支度いたすがよいぞ。」


あ、大騒ぎってあれか。やっぱおっさん有名な役者さんとかなのかな。

うむ、話が大きくなる前にってそのお言葉に同意でありますぞ、奥様。



「そんな早う追い出すようにせんでも、朝餉くらい馳走してやってもよかろうに。」


あいも変わらずぼりぼりとやりながらのおっさんの言葉。いや、奥様の言うように、さっさととんず・・・お暇したいんだよ、おっさん。それにしても、いつまで掻いてんだ。


「されど、この者の分も用意させるとなると、誰にも知られず、というわけには参りませぬぞ。」


ですよねー、ですよねー。


「よいよい。今の内裏の中で、そこまで細かい事を気にする者なぞ、そうおらんよ。」


おっさんしつこいな。波風立てないように静かににこにこして聞いてるだけでいたけど、直接お断りした方がいいかな。

でも確かに、あのゆるい撮影スタッフなら、ボクがお邪魔していたからって怒られることはないかも。

なんて考えたのが悪かったのか、


「左様でありますな。誰か様の影響で、しきたり・規律、と一々うるそうする者が減っておりますゆえ。」


一応チクリと刺しておかないと、ってな義務感を感じる言い方でおっさんを流し見る奥様。そして、言いながらもなんだか仕方なさそうに溜息を。

まさか、ここで折れるのか、奥様。

ただでさえ昨日の撮影をどうやらぶっちした臭いボクだ。スタッフさんと顔を合わせれば、怒られることはなくとも、居心地よくは居られまい。

またシーン撮りで呼びされるのは仕方ないとしても、少しでも引き伸ばして後回しにしたい!

な、なんとかせねば。


「いえいえ、そんなそんな。お泊めいただいた上にご飯までなんて。そんなご迷惑をお掛けする訳にはいきませんよー。」


朗らかな笑顔というやつを心掛けて、なんとか穏便に逃げ口上。

この奥さんなら、きっと空気を読んでくれるはず!


「む。そなた一人馳走するに、迷惑などと思うものか。」


ぐふっ、読んでくれなかった。お、奥さん~。


「それとも、今上様にはさような甲斐性もないだろうと申すか。」


しかも、なんだかわかんない単語つかって追い討ちっぽいものが!?

あの逃げる言い訳になにか奥さんの心に障る事あったかー。

とりあえず、このままではやばい。


「そんな、とんでもない!おっさ、帝に甲斐性がないだなどと、そんな事思ってませんから!こんなりっぱな建物もお建てになれる方のようですし!。」


そんな感じで否定した上で、ちゃんとよいしょ。こんな建物ぽんと建てられる人に甲斐性無しはいない筈。ぽんとかどうかは知らんけど。これでどうだ。


「な!この紫宸殿は光厳様の御世の折の物。御所とて足利義満公の普請にて今のように大きゅうなった。昨日今日の物ではないとわかっておろうに!。」


あんるえぇぇ?いやそんな。こんな立派な建物、ここら辺にそんなに前から無かったよ。

奥さんが何を言って怒ってるのか、わかんない。

てか、おっさんが建てたもんじゃなかったのか。

じゃぁなんで住んでるんだ。やっぱり不法滞在か。騙されかけたたぜこんちくしょう。


「まあまあ、良いではないか良いではないか。幼な子にそのような。」


おっさんが庇ってくれたけど、そもそも発端はおっさんだ、感謝はせん。てか、幼な子って。


「ボク、これでも14ですよー…。」


まあまあ、どうどうと、奥さんを宥めるおっさんに小さく告げる。聞こえなくても問題ないと考える程度での小さな声で。

でもしっかり聞こえてたらしい。


「のっ。そなた十四じゃと。わしはてっきり、九つか十とばかり。」


んなアホな。おっさん、目が悪いのか。中学生つかまえて流石にそれはないわー。てか、のっ、て反応はなんだよ。


「ほんに!妾も、よくて十に手が届くか届かないかと思うておったわ。」


…ないわー。奥さんまでとか、ほんとないわー。

というか、よくて10ってなんだよ、よくてって。

たしかに身長は平均よりちょっと(・・・)低いかもだけども。

…うん、まぁ結構?ひょっとしたら、かなり?低いかもだけども。

顔も歳よりは幼く見えるって言われちゃうけども!


「えっ、あっ、はい…。自分これでも14っす…。」


歳なんて言うんじゃなかった。

なんだか泣けてきそうになって、卑屈な調子に。

負けるなボク。


「左様であるか…。」


はー、こりゃ驚いた、ってな感じにそう口からもらす奥様の反応が、なんとも。隣ではおっさんが、何がおかしいのかふぇっふぇっふぇと笑っている。その笑い声の方がおかしいぜ、ふぇっふぇっふぇ。

そんな空気を押しのけて、


「ま、それはそれとして。童、食っていくがよいぞ。」


と、マイペースにのたまうおっさん。ぶれない。ある意味、やりおるわ。

話しを戻された訳だが、なんだか無性にどうでもよくなったボクは、はぁと曖昧にこたえる。


「そうじゃの。うむ、妾もなんだか面倒になった。それでよい。用意させる故、食していくがよい。」


それは奥さんも同じだったらしい。

うん、このおっさん見てると、なんかそんな感じになってくるよね。

しかし、この奥さん、ボクとおっさんに対するときで言葉遣いが全然違うなぁ。

奥さん視点ではボクは不審者だから仕方ないんだけど。

おっさんには凄く丁寧なのに、ボクには女王様系上から目線。同じ「わらわ」語調なのにはっきりわかる。

これも成りきりゆえだとしたら感心しちゃうんだけど、なんだか素っぽい。普段からの使い慣れた口調に感じる。

もしそうだとしたら、日常での人付き合いとかやっていけてんのかな。想像できないや。

ボクが心配する事でもないんだけども。

とにかく、朝ごはんをご馳走になる事になるし、お礼をいわなきゃな。

お礼は大事。とくに食べ物に関することは。


「お泊めいただいてお邪魔しているだけじゃなく、ご飯まで頂けるようで、ほんとにありがとうございます。」


深く頭を下げながら、改めてお礼を告げる。


「よいよい。帝の思し召しじゃし、妾が用意する訳でもないゆえの。礼を告げるならば、主上にだけすればよい。」


そう言って、口元を隠しながらほほほと。

おや。奥さんが作るんじゃないのか。おっさんやっぱりお金持ちで、お手伝いさんがいてるとかなのかな。

ああ、だとしたら、奥さんのこの口調も日常で使ってても問題なさげか。いや、んなこともないか。

それにしても、ここまで夫婦して生活からコスプレまで趣味を満喫して役柄に成り切ってると、楽しいんだろうな。


「さて、それでは妾はこの者の分も用意させて参りますゆえ。」

「うむ、頼んだぞ。」


立ち上がる奥様へ声を追わせるおっさん。

あ、いい加減、おっさん呼ばわりはやめたほうがいいか。一宿一飯の恩人だもんね。

名前教えて貰ったけど、なんだったっけか。

正親町はまぁ、横に置いとくとして。方仁さんだっけか。でも、名前で呼ぶのも失礼だし。


「帝、そういえばお名前はお聞きしましたけど、苗字をまだお聞きしてなかったです。何てお呼びすればいいですか?」


そう訊ねると、おっさ…方仁さんだけじゃなく、立ち去りかけた奥さんまで妙な顔でボクを見てきた。

なんだ、そんなに変な事聞いたか。


「ほんに不思議な子よのう。最低限の礼節は弁えておるようじゃが、帝に対してそのような尋ね事などと。」


そ、そんな変な事訊いたかな。


「このお方に、家名などというものは在らん。この日ノ本に唯一つのお家柄、必要のないお方じゃからの。」


・・・そこまで天皇様設定生きてんのか。徹底しすぎだろう。

あれ、そのくせ方仁さんって名前は明かしてるし。中途半端に抜けてるな。


「御名をこの者に?」

「うむ。わしも最初はそれなりの位の家中の者であろうと思っての。驚かせてやろうと思うての。肩透かしをくろうたがの。」


ふぇっふぇっふぇ、と変な笑い声で、思い出しながら何やら上機嫌に。

ボクが名前を聞いてもおっさんを分からなかったのが、おっさんにとっては愉快だったらしい。


「御名を聞いてもわからなんだのは、まぁこの歳の者なら仕方ありますまい。あ、十四じゃったか。」


すぐさっき明かしたばっかりなのにぱっと思い出せないほど若く見えるのか。へこむな…

あ、この場合は若いってより幼いっていうのか、ははは。      もっとへこむな…


「まぁ、そういう訳じゃ。好きに呼ぶがよい。わしは気にせん。」

「主上がそう言われるのであれば、妾も気にする訳には参りますまいな。そういうことじゃ童。遠慮なく御名であろうと口にだすがよいぞ。」


なんかわからんけど、まぁそういう事なら。


「で、では、方仁さんと。」


おっさん改め方仁さんへと膝を向け、朝ごはんもありがたくいただきますと、頭を下げる。


「ほっ。諱で呼ばれたのは久しぶりじゃわい。なんだか、こう、新鮮な響きじゃの。」


それもこのような幼な子に。こそばゆいわい。

そう続けつつ、顔がでれんと。いわゆる相好を崩してるというやつだ。

やらしい感じはしないけど、なんだかなぁ。


「たしかに。妾も、新大典侍と呼ばれるようになってからというもの、名で呼ばれることが()うなりましたなぁ。」


ふむ、と斜め上を見上げて呟く奥さん。

方仁さん、奥さんを名前で呼んでないんだな。


「童。いえ、ハル。特別にこの場では呼ぶ事を許す。名で呼ぶがよいぞ。」


両手を腰に当てつつ、ドヤ顔で。

この夫婦はいちいちドヤ顔をせんと名乗れんのか。





「妾は万里小路。名は房子。房子とよぶがよい!」




方仁さんの時と同じ。

やっぱり、これでもどうだといいドヤ顔である。



冗長って事は分かってますが、どうしても長くなる~。

これがプロと趣味チュアの違いなんでしょうね。

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