10ー9
温室の扉が開けられ、誰かが入ってくる気配に気がついて、瑠璃は声をかけた。
「マリィ?」
温室にもうけられた椅子で寛いでいたので、マリィが迎えにくるくらい時間が経っていたのか、と慌てて立とうとすると
聞きなれない男の声だが、聞いたことのある低い響く声が
「そのままで良い」と瑠璃に声をかけた。
カイラスではないのが、すぐにわかり、身を固くすると、瑠璃の前に姿を現したのは、ヴィグだった。
椅子に腰かける瑠璃の前に、着ている見るからに上品の身なりが汚れるのも構わぬように胡座をかいて座った。
瑠璃は突然の来訪者に、驚いた顔をしてヴィグを見つめていた。
「お前に確かめたいことがあって、文を出していたが、カイラスが返事を寄越して、ラチがあかないので、直接に聞くために、会いにきた」
風呂場で会ったときと変わらない、女なら誰もが夢中になる極上の笑顔をヴィグは見せながら、訪問の理由を瑠璃に教えたのだった。
そして、瑠璃の下腹部の辺りを、じっと見て
「まだ膨らんではいないか」と独りごちた。
ーなにが、膨らんでいないんだろう?
瑠璃は、ヴィグが視線を向ける先に、自分も目を向けた。
「あの、確かめたいことって、何ですか?」
ヴィグに目を合わせて瑠璃が聞いた。
「ルリよ、カイラスの子を、孕んだか?」
ヴィグがさっきまでの笑顔ではなく、真剣な
表情になり、瑠璃に真実を求める声音で聞いてきた。
瑠璃の返事を待ち、ヴィグがヒタと瑠璃を見据えている。
しばらく考えて、意味がわかり、どうしてそんなことを聞くんだろう、と思いながら、否を示すために、首を振った。
ヴィグがほっとしたように、その表情を弛めた。




