10ー7
ナオの到着から時を移さずに、「奥」の閉められた扉の向こうが騒がしくなった。
ナオが顔をしかめた。
「表の応接間でお待ちいただけるように、お願い申し上げたはずなのに」
ナオがマリィの顔を見守る。
マリィは、覚悟を決めて、「奥」の扉を開けることにした。
「ルリ様が、また面倒ごとに巻き込まれないと、いいのだけど。
ハイラルの王太子では、こちらに分はありませんからね」
「また?」
マリィが零した言葉のなかの「また」という響きに、ナオが反応した。
すでにマリィは、閉められた扉を開けるべく腰につけた鍵をその手に持ち、今まさに扉を開けようとしている。
ナオは、その言葉の意味を確かめられないうちに、扉が開く重い音を聞いた。
マリィが「奥」の扉を内に引いたその先に、ハイラル国の正装に身を包んだ王太子 ヴィグローヴァが悠然と佇んでいた。
「突然のお訪ねに、至らぬこと多く、申し訳ございませんでした。カイラス・バルク・ロザ・オビより、ブラックウォード城の奥を任されているマリィ・エル・ロンブレンでございます」と優雅な礼をとった。
マリィの頭上から男らしい低い声が響く。
「ロンブレン家といえば、バルク・ロザに近い血統の古からの武門で名を馳せるあのロンブレンか?」
「はい」
マリィは、頭を下げたまま返した。
「顔を上げていいぞ」
マリィが顔をあげると、ヴィグが興味深い顔でマリィを見ていた。
「ロンブレン家の家宝と言われる当主に伝わる剣は、我が一族の鍛治師がはるか昔に鍛えし大業物と聞かされたことがある。まさか、縁薄くないものに出会うとはな」




