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10ー5

色とりどりの薔薇に似た花が咲く温室のなかで、瑠璃はひとり過ごしていた。


城の庭園は、ブラックウォードの代々の城主が手を入れ、大切にしてきたもので、温室はカイラスが王宮からやってきた時に新たに作られたものだった。


カイラスがブラックウォードを経ってからずいぶん時間が経っていた。


マリィには、状況を報告する簡単な連絡があるようだったが、瑠璃には、なにも伝えてはこない。


太陽紋を刺繍した飾り帯を渡したことも、期待していたわけではなかったが、なにも反応がなかったから、かえって迷惑に感じているのではないかと、心配になった。


普段のカイラスが身に付けるものは、バルク・ロザにふさわしい厳選された良品ばかりなのに、瑠璃が贈った飾り帯は、見るからに素人が作ったとわかってしまう代物だ。


カイラスが時々、ひとりで温室で過ごしていることを、瑠璃は知っていた。城を離れているカイラスを少しでも感じたくて、こうして温室に足を運んでいる。


目を瞑り、静かにして、ゆっくり呼吸をしていると、温室に植えられた花の匂いが瑠璃の心と体を癒やしてくれるような気がした。


ーカイラスが、ここに来るのが、分かる気がする。


カイラスは、日々、人々に囲まれ時間に追われて過ごしている。


唯一、カイラスがほっとできる時間と場所を提供してくれるのが、温室なんだろう。


一緒に暮らすようになって、カイラスの誠実な性格が好きになっていた。


領主として、王族男子として、その務めを果たしながら、少しも、驕り高ぶることが

ない。


ロプノールの神殿で出会った男、サイラスは

カイラスとは正反対だった。


瑠璃を、その力で支配した。


目が覚めて、カイラスに、ここで最初に出会ったことは、瑠璃にとって幸運だったことが、今なら分かる。


ー初めて会うのが、サイラスだったら?


マリィには、記憶の底に沈めるように言われたサイラスと会ったときのことを思いだし、背中がひんやりする気がした。








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