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9ー11

男は腕を組み、マリィと瑠璃を尊大な様子で見下ろしていた。


「まるで、あの時と同じだな。王太子は、異国の美しいものがお好きなようだ」


その表情は、嘲りを含んだもののように見える。


「ロプノールに、王宮からの知らせが届かないのは、果たして、その女が貴妃と認められているのか?なぁ、マリィ?あの方は、なんと?」


マリィが、無言のまま、瑠璃に手を貸して、瑠璃を立たせようとしていたところに、男が質問に応えないことを許さない言いぶりで、話しかけてきた。


「王太子殿下が庇護を授けた....大切な方ですわ。王宮のあの方が認めようが、認めなかろうが」


硬い声でマリィが返す。


「いくら気に入ったとして、所詮、異国人であれば、子でもなしていれば説得する理由もあったろうが、愛妾にするのが倣いなはず。


まさか、あの堅物がすでに子でも授けたか?

安産祈願であるなら、神殿を間違えてる」


「オージェ村の長雨をおさめてもらえるように、神様にお願いにきました。カイラスの助けに少しでもなればと思って」


瑠璃は毅然と男と対峙した。


男は瑠璃をまじまじと見つめて、面白いものを見るような目つきをし、一瞬だけ、口の端をあげた。


「オージェの災害の件は、ロプノールも他人事ではない。今年は、長雨が続き、いつ、ロプノールでも同じことが起こるかわからない。実際、土砂崩れや崖崩れを起こしているのだ。明日の定祭に、わざわざ出ることになったのは、そのためだからな。


西の神殿に、美しい異国の女がいると神官たちが噂していたので、つい好奇心から、訪ねようとしていたら...」


男がマリィを脇に押しやり、瑠璃に近づいた。


金環をはめた瑠璃の左手を乱暴に掴んだ。

ぐっと抱き寄せられて、荒々しく、唇をカイラスに似た、しかし、その内にあるものはまったく似ていない男によって塞がれた。


「んっ、んっ」


抵抗しようとするが、割り入れられた舌によって、舌を絡め取られる。


カイラスが与えた口づけとは、まったく違う口づけを、瑠璃はその身に受けた。


「サイラス殿下!」


マリィが慌てた様子で、声をあげた。


瑠璃を堪能し、満足したところで、その男はようやく瑠璃を解放した。


「貴妃を助けた礼を、今、いただいた。

兄上の忠実な臣であるマリィは、貴妃と俺のことは見なかった。そうだな、マリィ?」


マリィは首肯したが、苦々しい顔をしていた。

「これ以上は、ここにはいないほうがお互いのためですね」


マリィが瑠璃の手を取り、西の神殿に歩き出そうとしたところに、サイラスが声をかけた。


「名は?

名を訊ねなかった」


瑠璃が答えようとしないでいると、男が追ってきた。


その手が、瑠璃の肩にかかる。


「名を」


男を振り返らずに口にした。


「瑠璃」







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