89/120
9ー10
男が瑠璃の顎をとらえて、顔を上向かせた。
お互いの目が合うと、男は、怪訝な表情をしたあとに、瑠璃に向かって笑いかけてきた。
男はカイラスに、やはり似ていた。
瑠璃は男とカイラスの違いを、その表情に探した。
男の、その瞳の色は深い湖を思い起こさせる色合いだった。
整った顔だちはそっくりではあったが、カイラスよりも傲岸不遜な雰囲気をまとっていた。
瑠璃と男が互いを見つめあっていたところに
マリィの鋭い声が届いた。
「貴妃様に乱暴するのは、許しませんよ」
「...........」
男はしばらく沈黙していたが、マリィが近づいてくる気配がしたので、瑠璃から手を離して、ゆっくりと立ち上がった。
「マリィ、お前がいながら、貴妃が東の神殿に入りこむとは、どういうことだ。
俺は、貴妃を助けてやったのに、ひどい言い様だな」
マリィが急いで、瑠璃を庇うように男の前に立っていた。
雲に少し隠れていた月が顔を出し、さっと男の姿が暗い夜の闇に浮かびあがる。
「まぁ!
まさか、殿下が、このようなところにおいででらっしゃるとは、微塵も思いませんでした。言葉が過ぎました。お許し下さいませ」
マリィが、驚きの声をあげて、すぐに男が誰か理解したのか謝罪を口にした。




