9ー9
瑠璃を見下ろしていたのは....
「カイラス....?」
月明かりに写し出された男の姿は、濃い金色の髪をしており、それは瑠璃に与えられた金環と同じ色だった。
面差しすら、カイラスにそっくりに見えた。
男が数歩、瑠璃との距離をつめてきた。
瑠璃が男を呆然と見つめているわずかな時間で、男により、瑠璃はその男の肩の上にあっという間に担ぎ上げられてしまった。
瑠璃は手足をバタつかせて、男から逃れようともがき、非難の声をあげた。
「降ろして!ひとを呼ぶわよ‼︎」
男が冷静に、厳しい声音で、瑠璃を叱咤した。
「神官を呼ばれて、困るのは、お前自身だぞ。東の神殿は、女人禁制なのだから。理解したなら、黙っていろ」
瑠璃は男が言った言葉の意味を理解した。小川を辿っているうちに瑠璃は東の神殿まで来てしまったようだ。知らなかったが東の神殿は、女人禁制の禁域だったらしい。
男は瑠璃に危害を加える気はないようだし、どうやら、瑠璃の窮地を救おうとしているらしい。
月明かりだけのなか、男は夜目がきくのか、確かな足取りで、瑠璃を荷物のように担ぎ上げながらもペースを落とすことなく、瑠璃が来た道を戻っていく。
しばらく、瑠璃も男も無言でいたが、男は西の神殿の瑠璃の部屋近くになると、瑠璃を、乱暴に肩から降ろした。
その勢いで、瑠璃は、地面に放り出されるような形になり、したたかに腰と背中を打ちつけた。
ゆっくりと身体を横に向けて、打った腰を手でさする。
男が瑠璃の傍らに片膝をつき、瑠璃を上から下まで、検分するように眺めていた。
男の視線が、瑠璃の左手首に嵌る金環に注がれた。
金環を間近で見ようとした男に左手を引っ張られ、その痛みに、瑠璃は顔をしかめながら、声を上げた。
「痛っ」
「太陽紋とは、な。
驚いた」
男は、口のなかで、小さくつぶやくように言った。




