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9ー6

珍しくその年は、秋に入ると雨が降る日が続き、カイラスが心配していたことが現実となった。


ヴァスキュラとハイラルの国境近くにあるオージェという村が河川の氾濫により、壊滅的な被害を受けたと、カイラスの元に報せが届いたのは、夜も明けきらない、まだ城内が静寂に包まれているときだった。


毎年、小規模な河川の氾濫はあったが、村ひとつが失われるくらいの甚大な被害が出たとあっては、カイラスが直接に、指揮をとらざるをえない。


まして、ようやく、治水のための大掛かりな河川工事をすすめようと計画していた矢先のことだった。


ハイラルからは、すでに、救援のための人出などが出されているらしい。


「奥」に、宿直の執務補助官だけでなく、城下から駆けつけたナオも現れた。


カイラスがナオに指示を出した。


「速やかに、災害救援のための人出を近隣の村から集めて、助けられるものは助けよう。

オージェには、わたしがすぐに向かう。わたしと一緒に動けるものを、一刻も早く招集してくれ。準備が整い次第、ブラックウォードを発つ」


ナオは、頷き、早速、「奥」を飛び出して行った。


その様子を傍らで、見守っていたマリィも

「今回は、長く、城を空けることになりそうですか?」と、心配そうな表情で声をかけてきた。


「ああ、そうなるだろうな。

ルリのことは、よろしく頼む」


長い期間、ルリとは離ればなれになりそうだった。


ちらと、ルリに会ってから...と頭に浮かんだが、ルリのことは、オージェ村のことが済んでからだ、と思い直した。


「ルリ様には?」

マリィが、カイラスの心をまるで読んだように言葉にした。


「まだ寝ているだろう。

良いから、そのままに。

マリィから、起きたら、詳細を話してやってくれ」


マリィは不服そうだったが「承知いたしました」と、カイラスの出発に必要なものを揃えるために、居室を静かに出て行った。

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