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9ー5

ふたりの間に、たしかな絆を感じたはずなのに、カイラスは瑠璃に「寝所を別にする」と言った。


気持ちを伝えるような優しい口づけと、ぬくもりを分かち合う抱擁に、瑠璃の心のなかにあった重苦しくあったものが、溶け出して、吐き出した息とともに、涙が溢れてしまった。


ー男のひとは、泣く女は面倒くさいって感じるものだって、どこかで聞いたことがあるから、面倒くさいと思われたかも....


カイラスを好きな気持ちは、まだ、カイラスには告げていない。その機会を、もうすでに逸してしまい、瑠璃は永遠にその機会は、やってこないような気がしていた。



寝所を別にしてから、カイラスは夕食までには、「奥」に戻ってくることは多くなりはしたが、どこかよそよそしい。


瑠璃が先に居室から、寝室に向かい、居室にはマリィとカイラスが残されていた。


「表」の補助官たちが、たまに「奥」に遅くにやってくるようになり、マリィはカイラスに呆れたように言ったのだった。


「執務補助官たちだって、それぞれの生活がありますわ。

あまり、殿下に付き合わせて、こんな時間にまで、仕事をさせるなど、感心いたしません。

ルリ様と過ごす時間だって、ますます少なくなりますから、奥に仕事を持ち込まないで下さいまし」


カイラスは聞いているのかいないのか、持ち込んだ書類から顔を上げずにいた。


「ルリ様から、見放されても、私は味方しませんよ。今回は、私はルリ様の味方をします」


カイラスがマリィの脅すような声に書類から顔を上げた。


マリィはニッコリと凄みのある極上の笑顔をカイラスにくれた。


ーマリィが、極上の笑顔なときは、怒っている時だ。なんで、わたしが怒られねばならないんだ。


カイラスは、その理由が、はっきりとは推察できずにいた。


「地方の視察も滞っているし、陳情も重なっている。仕方がないことなのだ」


また書類に目を戻しながら、つぶやくように言った。


たしかに、ルリとの間の気まずさを誤魔化すために、仕事を理由にしているのかも、しれなかった。


どうしたらいいのか、もう自分でも、わからなくて、袋小路に追いつめられたネズミのような気持ちを味わっていた。


ルリが好きで、一緒にいたいのに、嫌われたくなくて、一緒にいるのが、カイラスは怖かった。

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