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8ー6
ルリ様が口にしたーカイラスが、好きだからーという言葉は、音を伴わなかった。
俺は読唇術を警守の心得として、身につけていたし、ルリ様を警護していたから、ルリ様の様子を見逃すことがないように、気を張っていたので気がついた。
城下にお忍びだと通達が出たにもかかわらず、皆、殿下とルリ様を一目見たくて、ルリ様に近づいていくから、殿下がそれに気がついて、ルリ様と手を繋いだ。
その時だった。
ルリ様が「なにもいらないよ。カイラスがいてくれれば、いいの」
嬉しそうに、殿下に向かって可愛らしく告げた。
殿下は華麗にスルーしてたけど、しばらくして小さく、さらに...
カイラスが好きだから、と、言ったんだった。
そのあとの笑顔が、また、これ以上はないくらい幸せそうだったから、俺は、ルリ様は、殿下がすごく好きなんだな、と思う。




