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殿下の亡くなった母君は、このヴァスキュラを代々治めた家-トランスヴァール伯爵家の長姫だった。
ヴァスキュラから王宮に輿入れし、王との間に初子である、カイラス殿下が産まれた。
カイラス殿下が産まれた報せを受けたヴァスキュラの住人は、ヴァスキュラから次代の王となるものが現れたことに歓喜し、ブラックウォードの城下は、その後一ヶ月は、興奮の熱が覚めずお祭り騒ぎだったらしい。
もともと、カイラス殿下の母君 ラナ姫は、幼少の頃から病弱で、輿入れも、その父親に反対されたが、ラナ姫が王の庇護を受け入れたので、輿入れすることになった。
先代の伯爵家には、爵位を継ぐべき男児が産まれなかったため、先代が亡くなったあとは
王が代わって治めていた。
王宮からヴァスキュラは遠い地にあり、領民たちの陳情という形で、領主を求めたら、その血筋のものが相応しいだろうという配慮から、元服したばかりの年若いカイラス殿下が王宮からやってきたのだった。
年若いながら、領内を細かく視察し、領民から直接話を聞き、バルク・ロザだというのに、尊大なところがない殿下に、領内の住人たちは、心酔し崇敬するようになった。
また、殿下が設置した施療院や救済院などは領民の暮らしを助ける上で、なくてはならないものに、今ではなっている。
王位を継いだら、その名を名君として、語り継がれるだろう。
ヴァスキュラに先祖代々住んでいるものとして、ブラックウォード城に士官し、カイラス殿下に仕えることができることは、これ以上はない、名誉なことだと俺は思っている。




