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城下の中央に設けられた市場には、生活用品から生鮮食品まで、ありとあらゆるものが集められ、カイラスが許可を与えたものであれば、異国人でも商いができることになっていた。
色とりどりの天幕の下は、市場特有の熱気と高揚があり、瑠璃もその雰囲気にのまれ、気分が高揚していた。
人にぶつかり、あっちにふらふら、こっちにふらふらし始めたところで、カイラスに呆れられたように眺められ、カイラスの口の端が上がった。
瑠璃に、カイラスから手が差し出された。
瑠璃が、カイラスを見ると、首肯した。
カイラスが、迷子になりかねない瑠璃を心配して、手をつなぐことにしたらしい。
恥ずかしさのほうが大きかったが、カイラスの大きな手を握ることにした。
カイラスが瑠璃の手を、強すぎないがしっかりと握った。
ふたりで、ゆっくりと、いろいろなお店をのぞき、瑠璃が初めて目にするものについて、いくつか、カイラスに質問したりして時間を過ごすうちに、ふたりの間に、しばらく前からあった見えない壁が、いつのまにか、取り払われているのがわかった。
カイラスのまえで、自然に笑顔に、いつのまにか瑠璃はなり、カイラスもまた、瑠璃を見つめる瞳に温かなものを宿していた。
ー市場に、連れてきてもらって良かった。
瑠璃は、その気持ちを素直に口にした。
「今日は、ありがとう」
「?
まだ、なにも与えていない。
礼をいわれるには、早いと思うが」
不思議なものを見る顔をして、カイラスが瑠璃の言葉の意味を探るように見つめてきた。
瑠璃は、カイラスに笑顔を向けた。
「なにもいらないよ。
カイラスがいてくれるだけで、いいの」
さらに訳がわからなくなった表情をして、カイラスが言った。
「なにもいらないなど、来た意味がなくなる」
瑠璃は、柔らかな笑みを浮かべるだけだった。その笑顔は、これ以上はないというほどいきいきと美しいものだった。




