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6ー6

カイラスと会えなかった一週間のあと、マリィからめずらしくカイラスが仕事の愚痴をこぼしたと聞いた。


ヴィグの件で、余計な心労をかけたことの自覚が瑠璃にはあった。


ヴィグとの間で、なにかあったわけではないが、カイラスに知られたくなかった。


瑠璃に贈られたヴァイオラニの涙の意味は、ヴィグの洒落なのだろう。

だけど、ふたりだけの秘密の証拠のようで、うしろめたい気持ちが、胸を塞いでいた。


瑠璃は、その価値がどれほどのものなのか図りかねたが、マリィから、カイラスが大事にしている良馬を手離すつもりだと聞いて、ますます心苦しさが募った。


瑠璃には、カイラスに、なにも、差し出すものがないのに。


カイラスが、寝所で、くつろいでいるときに、瑠璃ができることといえば、話しを聞いてカイラスの心が軽くなる手伝いくらいだと思って、言葉にしてみたが、「必要ない」とあっさり、申し出は断わられてしまった。


ーヴィグに浴場で会ったあの日。


カイラスに会いたかった。

瑠璃にも、その理由はわからなかったが、カイラスの琥珀色の瞳に宿る温かなものに触れたかった。


カイラスを求めている自分に気づいて、驚いた。


笠井賢一郎に抱いていた仄かな淡い想いではなく、瑠璃の胸の深い場所が、うねりをあげていた。


瑠璃は男女の営みについて、知識としてはあ

ったが、カイラスが花街の女たちと、どう過ごしているのか、と思うと、想像の範囲でしかない。


カイラスと初めてキスした時のことを思い出していた。


カイラスが、瑠璃以外の誰かに、同じことをしているかもしれない、と思うと、胸の内が冷えびえとして、なぜか、涙が流れた。


明け方、そっと瑠璃を抱きしめたカイラスの温もりが瑠璃の冷えびえとした心をも温めてくれた。


言葉にできない、この胸のうちを、カイラスにも、知られないように、と、願いながら、溜息をつく。

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