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5ー10

初めてのことだったが、カイラスは昼食を済ませるまで瑠璃と一緒にいて、


「今日は、なるべく早く戻る。」


と言い残して、「表」に向かって行った。


ふたりきりになると、マリィが、


「ルリ様と過ごせなくて、きっと、寂しく思っていたのでしょうね。」

と、カイラスの胸の内を代弁するように、つぶやいた。


「会議は無事に終わったの?」


マリィに教えられた毎年のハイラル国との、貿易交渉は、なかなか折り合いがつかないものだ、ということだった。


「ルリ様に、祝いの品を贈って下さったヴィグ様が使節団の代表なのですが、風呂が気に入ったから、と、すべて、ヴァスキュラの申し出た条件のとおりにしていただけた、と、殿下がお話ししていました。」


瑠璃は、昨夜のカイラスの言いつけを守らずに、浴場で、謎の男に会ったことは、とりあえず、口を噤むことにした。


マリィが困惑した表情をしながら、ルリがヴィグに貰った石に目をやった。


「それにしても、まさか、このような高価な品をいただくとは、私も驚きました。」


瑠璃は、マリィが発した言葉に「えっ⁈」と、驚きを返した。


マリィが言い継いだ。


「ルリ様が贈られた石ですが、ハイラル国のそれも王族にしか許されない宝石ですわ。


黒髪、菫色の瞳の美しい女神、ヴァイオラニの言い伝えにちなんだ、ヴァイオラニの涙という。


殿下は、相応の品と仰っていたので、多分、オビの王室に集められた良馬を贈るつもりでしょうが、結構な数を揃えて、お返ししないと、釣り合いがとれないのではないかと思います。」


瑠璃は蒼ざめた。


「そんなもの、私が貰っていいの?」


マリィが瑠璃を気遣うように、言った。


「お祝いの品....ですしね。

丁重にお断りできたのかもしれませんが、殿下が、もう受け取ってしまいましたから。」


瑠璃の顔が曇る。


「だからかなぁ。

カイラス、朝から機嫌が悪くなかった?」


マリィは軽く微笑みながら、カイラスの機嫌が悪い理由を教えた。


「まぁ、お疲れも溜まっているでしょうし...


表で、ルリ様のことで、ちょっとあったみたいですから。」


瑠璃が訳がわからない顔をしていると、先を続けた。


「会議の最終日は、夕方から表に花街の女性を招くのが仕来りなので、城内の女性は、城下に下がるのが通常でございました。


てっきり、ルリ様も私たちと一緒に行かれるのかと思っていたら、殿下が、ルリ様は、城内に留めおかれるとおっしゃって、


城内のものたちに、ルリ様のことは、使節団の方たちに口外無用と命じたのです。


お酒の席で、口を滑らせたものでもいたのか、ヴィグ様の耳に入ってしまったようで。」



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