5ー6
マリィが伝えたとおり、日が暮れると、城内の女官はマリィを含めて、皆、城下に退出してしまった。
居室にひとりいた瑠璃は、あることを思いついた。
カイラスは確かに居室にいろとは言ったが、入浴場に行くくらいは問題ないのでは。
まさか、領主のプライベートスペースである「奥」にまでやってくる不逞の輩もいないだろう。
「やることもないし、ゆっくり、お風呂にでも入りますか。」
と、浴場に向かった。
瑠璃が、城にやってきてからのカイラスのことを考えていた。
出会ったときに乱暴にされたことで、恐怖と怒りから逃げ出した。
ふたたび会うことになるとは思ってもいなかったので、バルク・ロザだと分かったときは
どんなに驚いたことか。
慎重に距離をはかり、瑠璃の心に近づいてくるカイラスを最近は、いやだとは感じなくなってきていた。
「そういえば、マリィが言ってた証ってなんだったのかしら?」
「表」に花街の女性を迎えるということのなかに、カイラスが含まれることに、少なからずショックを受け、聞き流してしまった。
マリィが、以前は、カイラスも年頃の男性らしく、夜、城下を訪れることもあった、と
話していたことも思い出していた。
一週間、カイラスに会っていなかった。
カイラスからもらった、瑠璃の左手首にはまった金のブレスレットに触れる。
なくしたネックレスが瑠璃とかつての世界を繋ぐものだったかわりに、新たに身につけたブレスレットが、この世界と瑠璃を結びつけているように感じた。




