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4ー5

よっぽど、私が殿下の顔を見つめていたのか、殿下が言った。


「そんなに見るな。

わたしの顔に穴をあけたいのか、マリィ。」


私の頭のなかは、混乱していた。


殿下も、年頃の殿方らしく、城下に可愛いひとをもつことはあったようで、そういう話はそれとなく漏れ伝わるものだったから。


貴妃を迎えたのであれば、城内のものに、また、王宮に知らされて然るべきだ。


殿下が右手を額にあてながら、この状況をどう説明するか、考えているのが分かった。


先に口を聞いたのは、私だった。


「貴妃を迎えたのですか?」


眉根を寄せて、難しい顔をしながらカイラスが、それに応えた。


「ある女に、わたしの金環を授けた。」


殿下の金環を授けられるということは、王族男子の庇護を得るという、この国の女性が、こぞって欲しがるものだ。


「奥」は、マリィと年嵩の女官と、男の従者しか配されていない。


女官のなかには、寵を積極的に得ようとするものもいたりして、面倒がきらいなカイラスによって、「奥」に配される女は限られることになった。


「金環を授けた女は、年若い黒髪の異国人だ。言葉も通じない。」


その女性のことを思い出したのか、小さく微笑みながら自嘲気味に、そして、こう言った。


「金環を授けたのに.....。

どうやら、逃げられたようだ。」


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