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家政務長 マリィの回想
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「奥」に、殿下に抱きかかえられて、ルリ様がやってきたのは、ハイラル国との貿易交渉の使節団を、あと5日もしたら迎える、城内が皆、忙しくしていた時だった。
初めて会ったルリ様は、黒髪に、焦茶色の瞳に、オビ人とは違う雪肌で、女の私でも目を惹かれた。
取り立てて、私が美しいと感じたのは、ルリ様の凛とした佇まいと所作の優美さ。
ルリ様が美しい女性だということは、殿下から耳にしていたけれど。
ルリ様の左手には、殿下の貴妃の証である、金環がはまっている。
殿下から、伝書が私の手元に届いた日。
ーカイラスは、毎年、春先に数日エルシアの別荘に滞在する。
日々忙しく「表」の仕事をこなしているカイラスが唯一、自分に許している自由な時間だったから、マリィは、あえて、その時間のことは詮索しなかった。
急に、数日滞在を延ばす...
と、伝書には理由が書かれていなかった。
こんなことは、今までなかったので、別荘で殿下に、なにかあったのか、と不安に感じた。
近衛も従者も伴わないのは、毎年のこととはいえ、殿下の身に何かあったら、どうしたらいいだろう、と、落ち着かなかった。
マリィが、王宮の近衛長をしている長兄 エルミアに連絡しようと決めた、すぐ、あとに、ラタから疲れ果てた様子のカイラスが戻ってきたのだった。




