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ヴァスキュラはオビ国の最も北にあり、すぐ隣には国境を接してハイラル国があった。
ハイラルとは、ひとや物の流通が盛んで、毎年、夏になる前にハイラルの使節団を迎え、細々とした取り決めをしていた。
その使節団の到着が、もう一週間を切り、城内は活気に満ち、また、皆、忙しくしていた。
カイラスも、もちろん、定めた行政区の区長と打ち合わせをしなければならないなど、ヴァスキュラを治めるものとして、これ以上はないほど忙しかった。
カイラスが執務室で、書類に目を通している時だった。
執務補助官のナオが、申し訳なさそうに、カイラスに声をかけてきた。
「殿下のお耳に入れるようなことではないと思ったのですが、少し、気になったものですから、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
カイラスは書類から目を上げずに、
「よい。
話せ、ただ、手短にな。」
と、耳だけ貸すことにした。
ナオはカイラスに、どう、話してよいものか
逡巡したあとに、切り出した。
「最近、城の門衛のところに、カタコトしか話さない異国人の女が、押しかけてくるようなのです。
なにをしたいのかも、わからず、城を指さして、ふんぞりかえるらしくて、門衛が対処に苦慮しております。」
カイラスはそんな話だったのかと馬鹿馬鹿しく思ったが
「その女は、正気ではない、可哀想な女なのだろう。ハイラルの使節団が来る前に、保護して救済院か施療院に入れとけ。」
聞き逃した言葉が引っかかった。
「ナオ。
今、異国人と言ったか?」
カイラスは書類から、目を上げて、ナオを見た。
ナオは、はっきりと肯いたのだった。




