2ー8
逃げ出すことを決めたあと、瑠璃には、ある計画があった。
言葉も話せず、土地勘もないけれど、唯一、ここで生き延びる方法があるとしたら、お金を手にすることだろう。
瑠璃が唯一、カイラスに感謝したいのは、ここでどのくらいの価値になるのかわからないが、高価そうな金のブレスレットをくれたことだ。
さすがに、見るからに高そうなものだったから、元の持ち主に返すべきか悩んだが、瑠璃のファーストキスと瑠璃の大事なネックレスと等価交換ということにした。
ブレスレットをお金に替えるとしたら、ここにあるかわからないが、質屋か宝飾店を探さなければならない。
宿までの道すがらには、小さなお店しか見かけなかったから、なんとか、大きな街にたどりつきたかった。
カイラスを置き去りにした宿から、しばらく走って、後ろを振り返ってみた。
とりあえず、誰も瑠璃を追いかけてきそうな気配はなく、その場に力付きて膝をついた。
走りながら、おばあちゃんが、いつも、瑠璃を励ますときに言う言葉が頭に蘇っていた。
ーだいじょうぶ。
あんたは、ちょっとやそっとのことで折れ やしないよ。
そんな弱虫に、私は育てた覚えはない。
共働き家庭で、瑠璃の面倒は、瑠璃の母親よりも祖母がみていた。
ー人間、生きていれば、いいことも、いつか
あるよ。
本当に、生きていれば、いいことがあるのなら、ここで、生き延びなければ。
厳しいがやさしくもあったおばあちゃんに会いたくなって、瑠璃は嗚咽がとまらなかった。




