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執務室の重厚な机の上の、片付かない書類の山に溜息が出た。
カイラスの人生で、こんなことは、初めてだった。
オビの王族男子として、また、辺境伯としてこなさなければならない仕事は山のようにあるのに、身を入れることができなかった。
気がつけば、また、ルリのことを考えている。
貴妃という栄誉を与えた自分を打ち捨て、遁走した女のことばかり考えるなんて、頭がおかしくなったのかもしれないと自嘲した。
あんなに酷い仕打ちをされたにもかかわらず、また、ルリの笑顔が見たかった。
オビの女に好意を寄せられることはあっても、嫌われたことはない。
カイラスは女にとって好ましい容貌をしている自覚があった。
また、慎重で几帳面な性格のために、ひとりの女とゆっくり関係をもつことを好んだ。
弟たちは、すでに年若いうちから、何人もの貴妃を抱えていたが、カイラスには、できないことだった。
貴妃に迎えたルリに心を尽くして、仲の良かった両親のように温かな関係を作るつもりでいた。
ルリに会いたい。
今ごろ、どうしているだろうか。
探させているにも関わらず、ルリの目撃情報はあがってこない。
ラタの周辺で、若い女の死体も見つかっていないから、カイラスは、まだあきらめてはいなかった。
カイラスに、ルリを、諦める気持ちは、なかった。




