郷に入れば、郷に従わざるをえない
2ー1
瑠璃は、逃げ出す機会をうかがっていた。
男が、初めて、男の住まいらしい豪華な造りの建物のなかを瑠璃の手をひいて移動していた時、もしかして、外に出られる可能性に思い至った。
しかし、建物の外には、出たが、男に毛布を身体に巻きつけられ、身体を拘束された上に、初めて馬で移動するという苦行を強いられた。
男は、どこかに向かっているようだ。
ときどき休息をはさみ、水や食べものをすすめてきた。
瑠璃は、男から、顔を背け、あからさまな態度で、拒んだ。
それでも、諦めず、休息するたびに同じことをするので、瑠璃もいい加減辟易した。
途中、幾つかの集落らしい場所を通り、この道行きが、果たして、いつまで、そしてどこまで続くのか、不安が大きくなり始めた時に
、色とりどりの織物が店先に並ぶ土産物屋らしいところに連れて行かれた。
男は、瑠璃の顔を一瞥すると、幾つかの織物を選び、瑠璃の前に置いた。
このなかから、好きなものを選べー
瑠璃を見た男の表情が、そう、言っていた。
男からは、なにも、貰いたくなかったが、疲れていたので適当に、瑠璃にいちばん近い場所に置かれた光沢のある青い高価そうなものを選んだ。
男の歳は、はっきりはわからなかったが、男が住んでいた贅沢な邸宅や瑠璃には高価なものに見える上質な織物を、躊躇せずに買う姿から、男は地位があり、財力もあるのだろう。
織物を買うと、店の店員となにか話し込んでいた。
ちらりと、瑠璃を見たあとに、男は瑠璃を置いて、店の外に出ていった。
男が瑠璃から離れることがなかったので、不思議に思ったが、瑠璃がそろそろ待ちくたびれた頃に、その手に何かが入った紙袋をもって現れた。
店員に、金貨を渡していたので、男がいない間、瑠璃は見張られていたらしい。
しかし、瑠璃の心に希望が出来た。
男が、瑠璃から離れるときがあることが分かった。
男を出し抜いて、男のもとから逃げだすチャンスを絶対つかもう。
瑠璃は、男に内心の決意を知られないように細心の注意を払うことにした。




