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初めて女が自分の名を口にした。
カイラスも、女の名である「ルリ」を、女に続いて口にする。
「ルリ」
カイラスの身のうちに、たしかな満足をもって、その言葉が響いた。
ルリと目が合うと、カイラスの予想を裏切るかたちで、ルリが笑顔になった。
ルリが目覚めてから、泣き顏か怒り顏と、あきらかに不機嫌なようすしか目にしなかったので、まさか、笑顔を向けてくれるとは、思ってもいなかったのだ。
ルリがオビの言葉を理解できなくても、かまわなかった。
身のうちから、湧き上がる思いを口にした。
「お前はわたしのものだ。」
自分のうちにある、心地よいが荒々しい気持ちの昂ぶりは、カイラスが初めて経験するものだった。
なにをいわれているかわからないルリは、懸命に理解しようとカイラスの顔を見ていた。
カイラスも、満足した笑顔を、ルリにくれた。
ルリはカイラスの笑顔につられるように、また、微笑んだ。
カイラスは、その笑みを、新妻の賛同と受けとることにした。




