1ー17
カイラスと女がラタに到着したのは、もう太陽が落ちてからだった。
ラタの言葉の由来は「神々が祝福した」というもので、カイラスと女の新婚一日目の夜を過ごす場所には、相応しいような気持ちがした。
ちょうど新月を迎え、ものごとを始めるには最善の日だとされてもいる。
迷信は、年寄りが信じるものだと、鼻で馬鹿にしていたが、女との結婚生活が順調とはいえない始まりだったので、そのくらいは信じたかった。
ラタにある満天星亭では、その名が示すように、それこそ、温泉に入りながら、美しい夜空を眺めることができた。
女を気遣いながら、馬をすすめたので、夕食の時間に間に合うか心配したが、それまでには、なんとか、間に合って、カイラスはほっとした。
途中、どんなにすすめても、女はかたくなまでに、やはり、何も口にしなかった。
ふたりきりだと、また、女が食事をしない気がしたので、ふたりが泊まる離れ部屋ではなく、あえて、ほかの宿泊客たちと同じ食堂でとることにした。
それなら、女も、少しは食事をするかもしれない。
満天星亭の常夜灯のほのかな灯りが柔らかく瀟洒な造りの建物を照らしていた。
女は、今日の宿を気に入ったようで、身振りで、今日はここで寝むことを教えると、ほっとしたような表情をした。
女の身体を求める気はなかったが、少しは夫婦らしく過ごしたいと思った。
女のようすを見ながら、名前を教えよう、と決めた。




