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瑠璃の左手には、男がくれた男の髪の色と同じ金色のブレスレットがはめられていた。
男は、瑠璃にブレスレットをはめると、満足したのか、それ以上は近づいては来なかった。
予想した最悪の出来事は、どうやら「今」ではないらしい。
またしても、瑠璃に話しかけてきたが、言葉が話せないのは、男も承知しているのに、と思い、返事はしなかった。
油断して、さきほどと同じ目に遭いたくなかったので、男の動向をなにひとつ見逃さないように、気を張った。
ここでは、自分の身は自分で守るしかないことが分かったから。
男が、水と瑠璃が見たことのない食べものを瑠璃の目の前に置いた。
目が覚めてから、なにも口にしていないことに気づいたが、また食べれば、必ず出すことも考えなければならないことを思うと、食べたくなかった。自由にトイレにも行けそうにないのだから、嫌だった。
食べない瑠璃に、男は無理矢理食べさせようとしてきたので、口から吐き出した。
心配そうに、瑠璃の顔色をうかがっていた。
このまま、食べなければ、徐々に衰弱し、最後は死ぬのかもしれない。
男が恐れていることが、もし、そうなら、どういう理由で、男は瑠璃のことを心配しているんだろう。
親切にしてくれたかと思ったら、襲ってきたり、ブレスレットをくれたり、男の行動を考えると、不可解すぎて、考えたところで、答えは出ない。
男に手をひかれ、広い屋敷のなかを通り抜け
外に出ると、一頭の立派な黒馬が男を待っていた。
もしかして、この馬に乗って、今度はどこかに連れていかれるのか。
目覚める前は、平凡な女子高生だったはずなのに。
男は瑠璃を上から下まで、目で検分したあとに、手にしていた毛布を身体に巻きつけてきた。
男は厚手の上着をきて、温かそうだ。
ここの気候はわからないが、建物に続く道の傍には、色とりどりの小さな可愛らしい花が咲き、日本の四季で言えば、春をむかえようとしている頃に見えた。
男に荷物のように、馬の上に抱えられ、瑠璃のなかで、男は、ますます嫌悪の対象となった。




