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城に戻るには、途中で一泊しなければならない。


いつも視察を兼ねて、大きな街道沿いの宿に決めていたが、今回は、妻をともなっての帰り道だ。


別荘のあるエルシアから、城のあるブラックウォードまでの間の道のりで、女にきっと気に入ってもらえる場所といえば、鄙びた場所ではあったが温泉がわき、自然の景観が美しいところに、一軒の泊まり宿がある。


身分を明かさないのは、いつものことだから、問題があるとは思えなかった。


カイラス自身には問題はなかったが、女が身につけた金環から、女の素性を怪しむものがいるかもしれない。


また、女が明らかにオビの人間ではないことは、その姿かたちからはっきりしていた。


女の大胆な装いも、ほかの男が目にするかもしれないと思うと、夫として許せるものではない。


女の服装に関しては、別荘には代わりのものがないので、女にはブランケットを着せかけてすませることにした。


ふたりで、城に戻るまでの間に、少しでも女の気が紛れ、好意とまではいかなくても、女が心を開き、せめて、名前を教えて欲しかった。


でなければ、妻を名無しのまま呼ぶはめになってしまう。

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