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悔しくて、悲しくて、混乱している。
部屋を出て行ったきり戻ってこなかった男に、いきなり襲われた。
男に瑠璃の大切なネックレスを壊され、男は
瑠璃の涙を、なぜか、舐めるという、もはや瑠璃の理解を越えた行動をとった。
誰にとはなく助けを求めたが、その声は男の力の前に、部屋のなかに、虚しく響くだけだった。
ここでは、誰にも、助けてもらえない。
その絶望的な事実が、男の理不尽な仕打ちにより、身をもって、瑠璃に実感された。
日本ではありえないことが、ここでは、起きるのだ、ということも分かった。
分かったところで、瑠璃には、どうすることも出来ないことも。
瑠璃は、その身体に異性を受け容れたことはない。
結婚するまで純潔を守り通そうとは思ってはいないが、せめて、好きな男に捧げたかった。
こんな形で、身体を奪われることに悲しみと男に対する怒りしか湧いてこない。
なにがあろうとも、泣き顔は男に見せたくなかった。
せめてもの、プライドだった。
男はいったん、身体を離したあとに、瑠璃の様子を眺めていた。
身につけた小さな袋の中から、高そうなブレスレットを出し、瑠璃に差し出してきたが、
瑠璃のネックレスを壊した代わりの償いなのか、それとも、これから、男が行うつもりだろう、瑠璃にとっておぞましい行為への償いのつもりなのか。
どちらにしろ、瑠璃に受けとる気はなかった。
ベッドの上を後ずさったが、逃げ場は、もうなかった。
男が差し出したものを、瑠璃が受け取る気がないことが、男にも分かったのか、男はそろそろと近づいてきて、瑠璃に、そのブレスレットをはめさせた。
瑠璃は、なにがあろうとも、この男を許さないと、心のなかで誓った。




