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12ー6

昼は行方不明者の捜索に自ら加わり、夜は河川工事のための計画作成とさらに、近隣の村からの陳情書を読んだり、諍いごとをもつものたちの裁定など、やらなければならないことが、カイラスの前に山積みだった。


カイラスが、ここまで領主として、献身するのは、母方の父祖が代々ヴァスキュラを治めてきただけが理由ではない。


あの事件のあとも、変わらずにカイラスに忠誠を尽くしてくれたヴァスキュラの領民たち。


王都を追われるように発ち、たどり着いたヴァスキュラ。


その誰もが、事件を知らぬものはいないはずなのに、心尽くしてくれたのだ。


カイラスにとっては、生まれ育った王城ではなく、ヴァスキュラがすでに魂の故郷だと言えた。


オージェ山脈の麓。

ハイラル国と国境を接したオージェ村。


まだ闇があたりに残り、ようやく東から陽が昇り始めようかという時刻。


朝霧が、カイラスたちが寝む幕屋にもかかっていた。


その朝霧を縫って、一頭の馬とひとが、静寂を破り野営地までやってきた。


見張りにあたっていた警備のものに、ブラックウォードからの伝書を持参したことを伝えた。


見張りの男は、ブラックウォードからの使者に、その場で待つように伝えると、急ぎ、ラシットを起こしに走った。


幕屋の外のただならぬ気配に、外に出てくるものなど、にわかに、その周辺が騒がしくなり始める。


陽が昇り始め、オージェ山脈が赤くそまりつつあるなか、朝霧も消え始めた。


士官したものに配給される正装を着崩したまま、ラシットが慌てて、使者のもとに駆けつけてきた。


使者の息も乱れていたが、対するラシットの息も上がっていた。


髪は寝癖がつき、とりあえず服だけきて、駆けつけたことがわかる。


使者が口上を述べた。

「ブラックウォード城 ロンブレン 家政務長より、火急の用件により、書状を持参いたしました。すぐに、殿下にお渡し願う」


ラシットの手に書状を押し付けるように渡すと使者は、すぐに、馬に乗った。


状況が飲み込めないまま、今にも、走り出しそうな使者にラシットが慌てて声をかけた。


「申し、殿下のお返事は待たないのか」


使者は、息を整えもしないで


「伝書を届け次第、城に戻るように言われている」

と、言い捨てたかと思うと、来たときとおなじように唐突に、立ち昇る霧の向こうに消えて行ってしまった。




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