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立派な体躯の牡馬ですら、息荒く、今にも動きを止めそうだった。
鞭をふるうことなど、いままでなかったが、
カイラスは愛馬に、無情に鞭をふるった。
今は、少しでも早く、ブラックウォードに辿り着きたい、その一心だった。
ー国境近くのオージェ村に滞在するカイラスのもとに、マリィからの報せが届いたのは、まだ朝早くカイラスが眠りについていたときのことだ。
身の回りの世話を任せているラシットが、顔色を変えてやってきて即席の簡易ベッドで横になっていたカイラスの眠りを破った。
行方不明者の捜索は、国境を越えてハイラル側にも至り、三ヶ月をかけて行なわれ、ようやく、最後のひとりを探しだすことができたばかりだった。
近隣の村々やオージェ村の名主たちが集まり、連日夜遅くまで、復興のための計画が話しあわれ始めたが、おのおのが譲り合わず、遅々として進まない状況に陥っていた。
カイラスは皆が納得する方法を探すことが、時間がかかったとしても、後々の禍根を残さないためには良いと思っていたので、辛抱強く、協議の行方を見守っていた。
もともとあった河川工事の予定も、技師などとともに練りなおさなければならず、いつになったら、ブラックウォードに戻れるのかと先の見通しが立たないことに苛立ちもした。
そんなとき、カイラスになぐさめを与えてくれたのは、ルリがカイラスのために手作りしてくれた飾り帯だ。
居室でカイラスが書類に目を通す横には、ルリが飾り帯と格闘している姿があった。
「家庭科、もっと真面目にやっておくんだった」
頬を膨らませたり、額に手を当てて落ち込む姿だったり、かと思えば、嬉しそうに作りかけの飾り帯をカイラスに見せたり、そんなルリの姿を眺めるのは、いつまでも飽きることがなかった。
なんとなく二人の仲がよそよそしくなったあとでも、ルリが飾り帯を作っていたのは、カイラスも知っている。
ルリがカイラスのために、初めてくれた贈り物。
ブラックウォードに残してきたルリから、わざわざ届けられたものだ。
カイラスの心のうちに温かなものが湧きあがった。
ブラックウォードに戻ったら、ルリに、ルリは私のものだとはっきりと言い渡そうと自分に誓ったのだった。




