11ー10
カイラスが小さく、ポツリと口にした。
「マリィは、良き妻、良き母となれるだろうに。わたしのために、それを捨てさせるのか」
マリィは、カイラスが支えとなったといった笑顔を見せて言い切った。
「殿下のため、そしてオビにこれから生まれてくる子らのために。どれほどお役に立てるかはわかりませんが、一心精進いたします」
ブラックウォード城の「奥」には、その日から王宮にならい家政務長を置くことになったのだ。
「昔話に付き合わせてしまって、申し訳ありませんでしたわね、ナオ殿。
今、振り返ると、私も若く幼かったのです。
ナオ殿に話していて、自分で疑問に思うことがあったのですが....」
マリィは首をかしげて思案していた。
内心の狼狽が、隠そうとしても、ナオはその声が上ずるのを抑えられなかった。
「ち、誓いの....そ、装身具を、お、置いてきたって、そ、それは....」
ふたり同時だった。
「庇護は与えられたままってことになるのかしら?」
「夫がいるってことですよ!」
マリィがナオに目を合わせて言った。
「あの人は、追ってもこなかったし、立てた誓約は守っているのだから、獅子も文句は言わないと思いますわ。
私としたことが、今になって気づくなんて!
あの時は、ブラックウォードに行くことで頭がいっぱいでしたから。
ところで、ナオ殿に好いた女性がいたとは知りませんでした。
ナオ殿は、生まれ順を示す呼称が、ラサだからベルサール家の嫡男ということですよね。
早く、その方に庇護を与えて、ご両親を安心させてあげて下さいませ。
親不孝ものの私が言うことではないかもしれませんが」
ナオは心の内でマリィに応えていた。
ーわたしも、生涯独り身が確定しました...




