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貴妃としてカイラスが迎える女は、カイラスを恐れ寝台の上で、その身体を固くしていた。
まるで汚いものでも見るような目で、カイラスを見ている。
瞳に強い怒りの炎を宿して、この理不尽な状況を断罪していた。
オビ国で、カイラスの貴妃の座が欲しい女は数多いるのに、なぜ、この女なのか。
自分の幸運を知りもしない女を、貴妃に迎える自分の酔狂さに、おかしくもあった。
だが、この女が欲しかった。
カイラスに迷いはない。
身につけた飾り帯に吊るされた小物入れから、カイラスが庇護を与える証-太陽紋が彫られた精巧な造りの金環を取り出す。
「お前に庇護を与えるので、受けとって欲しい。」
と、なるべく優しく聞こえるようにゆっくり話しかけてみた。
だが、女は寝台の奥に後ずさり、ますます身体を縮こませるばかりだった。
しばらくの間、女の様子を眺め、「証」を受けとってもらえないことが分かった。
女を乱暴に扱いたくはなかったが、仕方がないと諦めることにした。
カイラスが女に近寄ろうとすると、女は膝を抱え、顔を埋めた状態で泣き始めた。
女を怯えさせないように、ゆっくりゆっくりと細心の注意を払って近づく。
すぐそばまで近づいても、もう、女は諦めたのか、抵抗する素振りは見せなかった。
女の左腕を取り、庇護を与えた証-女が産んだ子に王位継承権を与えるという、女なら、誰もが望むだろう幸福-を授けた。
カイラスと女は、この金環に彫られた誓文のもと、たった今、夫婦になった。
カイラスは女の名前すら、いまだに、知らなかったが。




