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マリィの胸の内に、ひとつの懸念があった。
サイラスの残した言葉が、それを裏づけるような気がした。
王宮は、カイラスが瑠璃に庇護を与えたことに、未だに、なんの返答も寄越していなかった。
ー殿下は、あの事件があってから、王宮では微妙な立場にある。
ヴァスキュラを長年良く治めていることから、王宮では、カイラスを支持するものは増えてはいたが。
王宮の現在の家政務長であるカイラスの叔母 ラーラ・デュー・トランスヴァールに、マリィは折に触れて手紙を出していたが、瑠璃のことについては、意図的に沈黙しているようだ。
ー後ろ盾のない異国人。あの方と同じ。
「ロンブレン家が、ルリ様の後ろ盾になれればいいのでしょうが、私が現当主の父に勘当されてしまっているので、私のお願いでは無理ですしね」
ナオは、マリィの個人的な身の上話を聞くのは、初めてだった。
「あの、勘当されているって、どういうことなのです?」
マリィは、おかしそうに笑った。
「父の用意した相手を置き去りにし、殿下を追ってヴァスキュラにやってきました。
ですので、ロンブレン家から縁を切られているのです。
私は家庭に入るように命じた父に背き、仕事を選んだのです」




