11ー6
王宮で子が父に毒を食させるという恐ろしい事件が起きたのは、カイラスが母 ラナを病いで亡くし、その傷心がようやく癒えようか、という時だった。
ラナに面差しと雰囲気が似ていたために、異国人でありながら王宮に召された愛妾だった。
その儚げな美しさからダリウス王の寵も賜わり、カイラスも懐いていた。
愛妾が生まれ故郷の菓子をカイラスとともに作り、ダリウス王にカイラスが差し出した。
ダリウス王が口にするものは、毒味役が一度毒味することになっていたにもかかわらず、子どもの作った菓子と油断があったのか。
ダリウス王は、菓子を口にしたあと、激しく身をよじりながら、血を吐いた。また、しばらく、昏睡状態に陥り生死の境を彷徨うまでになり、誰もが、故意ではないかと愛妾を疑い、すぐさまに、取調べが始まった。
その毒は誰でもてに入れられるような身近なもので、愛妾は、無実を訴えたが、過酷な取調べに耐えられなかったのか、その精神を壊し、幽閉という処置が取られたあとに、結局、真実は誰にもわからないまま病いをえて、呆気なく死んでしまったのだ。
ーなにものかによる故意だったのか、偶然だったのか。
カイラスを将来の暗君となじったのは、サイラスの母 アイラだった。
カイラスの後見役だったトランスヴァール家当主もラナが亡くなったあと、わずかであとを追うように亡くなってしまっていた。
唯一、ラナの付き添いとして王宮に上がっていたトランスヴァール家の二の姫ラーラの奮闘により、カイラスは廃嫡されることはなんとか免れた。
回復したダリウス王の配慮により、ヴァスキュラのエルシアの別荘に、まるで、隠されるように住む日が一年続いたあと、王宮に戻りはしたが、元服がすんだら、またヴァスキュラを治めるよう命が下り、王宮をあとにした。




