11ー5
マリィはロプノールの神殿でのことを話すべきか逡巡したあと、ナオに話し始めた。
「じつは、ロプノールの神殿で、サイラス殿下にお会いしました。ちょっとした出来事がありましたから、私としたことが、また...となど口走ってしまったようです。
サイラス殿下のことは、たぶん、大丈夫だと思います」
ー助けたお礼は、きっちり、ルリ様から奪っていったのですもの。
マリィは内心の思いは、口にはしなかった。
「サイラス殿下というと、殿下のすぐ下の弟君の?」
ナオはマリィに確認するように聞いたのだった。
「ええ。トランスヴァール家よりも家格高く、王宮の執務官長を長年に渡り務めてきたレイエス家の長姫が生んだ皇子様です。
カイラス殿下と数日しか誕生した日が違わないせいで、いつもおふたりは、どちらが王に相応しい器かと、比べられることが多かったのです。
そのため、おふたりの仲は、兄と弟でありながら、距離のあるものになりました。
皮肉なことに、姿形は瓜二つで、違いといえば瞳の色くらい...なのに。
一年前、ロプノールの領主としてサイラス殿下がその任を望まれたと聞いて、ヴァスキュラの隣など殿下に対する敵対心からではないか、と疑ったほどでした」
ナオはマリィの話しを興味深い思いで聞いた。
「もともとサイラス殿下は、王宮に近い領地を治めていたのですよね?」
「そうです。
ヴァスキュラはカイラス殿下の母方の父祖が治めた所縁深い地ですが、ロプノール領はサイラス殿下とは縁もゆかりも無い地なはずです。
まぁ、サイラス殿下の母君がけしかけて、なおかつ、ダリウス王に強請って領地替えさせたのでしょう。そのくらいしそうな方なのです。猛女という言葉は、あの方のためにあるような気すらいたします。
今だに、カイラス殿下を廃嫡しようと画策しているのでしょうね」




