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マリィの切なげな胸のうちの告白に、ナオはふさわしい言葉が見つけられずに、黙るしかなかった。
また、ふたりの間をやるせない沈黙が横たわる。
「ナオ殿もお疲れでしょう。
花茶か香茶を、今、淹れますわね」
マリィが、ナオのために、花茶を差し出した。
ー家政務長のほうが、大変な一日だったはずなのに。
女性の身でありながら、ハイラル国王太子に対峙し、貴妃を護り抜いた。
バルク・ロザが全幅の信頼を置くマリィに、ナオは敬意を抱かずにはいられなかった。
そんなマリィの顔をじっと見ていたら、「ナオ殿?私の顔になにかついてまして?」
とナオにマリィが聞いてきたので、ナオは慌てて「いえ、何にも...。お茶が美味しいなぁ」と応えた。
マリィが淹れるお茶は、その時々で、温度や濃さなど微妙な加減がされていて、身体だけでなく、心にまで沁みるようなものだった。
ナオは、マリィが良く人を観察し、体調から気分まで把握した上で、お茶を淹れていることに気がついたときの感動を今でも覚えている。
ーなんて、心温かいひとなのだろう。
くれる笑顔そのままに、一緒にいると、なぜか自分も笑顔になれた。
マリィに対する敬意は、いつしか、特別な感情となり、ナオの胸の内に根を降ろしていた。




