11ー2
ナオは、その在るべき主が不在のブラックウォード城の「奥」で、マリィと向かい合って座っていた。
どちらも、その日の出来ごとを消化しきれず、口にするべき言葉が見つからないとでもいうように、貴妃の心の慰めにと、カイラスがオージェ村から瑠璃のために贈った清く咲く白百合を見るともなしに見ていた。
マリィが、ひとつ息を吐き出してから、沈黙を破るように口をきいたのだった。
「まさか、ルリ様とヴィグ様が私たちが知らないところで、お知り合いになっていたとは、私も大変驚きました。
なにも過ちはなかったと、ルリ様はおっしゃっていましたし、
婦の道に外れるようなことはなかったのだと、私も信じておりますが...
ヴィグ様は、ルリ様をハイラルに迎えるつもりがあるようでした」
温室でのヴィグローヴァの瑠璃への熱情滾る告白をマリィは聞いていた。
ー心揺さぶるような、懇願であり、命令だった。
「ルリ様は殿下に庇護を与えられているのに...」
マリィが、ナオの顔を見ていた。
ナオが気がつくと、マリィは柔和な笑顔を見せて聞いたのだった。
「ナオ殿は、その女のためなら、すべてを捨ててもいいと思えるような相手に出会ったことは?」
「好いた女性はありますが...。すべてを捨ててもいいと思えるかは、まだ、わかりません。なぜ、そのようなことを?」
「殿下も、ヴィグ様も、そのような相手に出会ってしまったようですわ。それが、幸せなことなのか、不幸なことなのかは、その本人にしかわからないのではないでしょうか。
恋は、人を変えるもの。
殿下やヴィグ様を見ていたら、そんな気がいたしました。
私は、殿下やヴィグ様を羨ましく感じます。
ひとは、多分、そのような相手に出逢うことのほうが稀でしょうから」




