10ー10
「突然に来て、おかしなことを聞いてすまなかったな」
ヴィグは、ルリがカイラスの子を宿していると分かれば、自分の気持ちは、ルリのために告げないつもりだった。
ハイラルの巫女姫 シルダリヤのーヴィグ、お前にもその機会は与えられるかもしれないーという言葉が、ヴィグのうちによみがえる。
ーまだ、姉者がまみえたアレは、父を定めてないとみえる。
あらためて、自分の気持ちを確かめるように
ルリを眺めた。
ハイラルに戻ってからも、ルリに出会った浴場でのことが思い出されて、後悔した。
ハイラルの男らしく無理矢理にでも、手に入れることはできなかったのかと。
あの日から、ずっとルリを欲しいと思っていた。
ルリは、ヴィグが次になにを言うのかと、見守るように、ヴィグの表情を探っている。
ルリに出会った日よりも前の自分には、もう戻れないらしい。
女に直心を捧げたいと思うようになるなんて、思いもしていなかった。
自由気ままに、恋をしてきたが、ルリに向かう自分のうちにある烈しい渇きに比べれば、戯れでしかなかったようだ。
「あの日...
カイラスに飽きたら、俺のところに来いと言ったことを覚えているか?」
ルリが、ヴィグを真っ直ぐに見つめている。
そして、ゆっくりと頷いた。
「今日は、お前に、そうは言わない。
ハイラルに...俺のところに来い。
ルリが好きだ。
ルリの心が誰に向いていようと、必ず、俺を好きになるようにしてみせる」
胸のうちにあるもの、ルリが、今のヴィグのすべてだった。




