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女はカイラスと同じく、人間だった。
そのことに少なくない驚きと、不思議な安堵感があった。
ーさて、どうしたものか。
捨て置くわけにもいかないだろうしな。
ある解決策が浮かび、その可能性を、素早く見積もる。
賛成派と反対派の顔を予想する。
反対派の代表として、
王宮にいる亡くなった母の妹-ラーラ叔母-の顔が浮かぶ。
婚姻の候補に上がっている娘は幾人かいたが、まだ自分の庇護を与える気持ちにはなることもなく、カイラスは王位継承権一位のものなのに、未だに貴妃をもたなかった。
貴妃を娶るように、王宮から催促があるのを、自分が治めるヴァスキュラが離れた地にあることを良いことにして、のらりくらりとかわしてきた。
オビ国は、オビと国境を接する国々と友好を結び、関係は良好で、譜代の家臣も多く、カイラスが婚姻という形で、国を守らなければならないことはなかった。
父にも、貴妃はカイラスが選んで良い、とお墨付きを得ている。
まさか、オビの女でない女を娶るとは思ってはいなかっただろうが。
マリィは反対はしないだろうが、女を見たらどう思うだろう。どんなことがあろうとも崩れない表情が変わるかもしれないと思うと、愉快だった。
そして、
女の処遇は決まった。
城に連れて帰るのに、いちばん良い方法だろう。
カイラスは目の前の女を、貴妃に召すことにした。




