プロローグ&第一話
会話の練習作に作りました。
アドバイスありましたらよろしくお願いします。
平成の日本、東京の都会も都会な煌びやかな街中に一区切り、
どこか時代にとり残された様なある古い外観のお店があった。
その店は、マニアが見れば思わず写真に収めたくなる様な、
昭和を思わせる独特な品格と雰囲気をかもし出していた、
というのに、店の前を通る通行人は一人として目を向けなかった。
まるでそこには何も無いかのように、
しかし、それも仕方なし! このお店には超宇宙的結界が張ってあるのだ。
この結界、第40337未開惑星:地球の人々の認識を阻害して気づかせないバリアの様なものである。
そう、もうお分かりの方もいるであろう、このお店、なんと宇宙人専用のお店なのだ!
店の名を――なんでも宇宙総合デパート[スペシャリウム竹田]デリバリー支店第40337未開惑星:地球支部、という。
これは、そんな宇宙世界でも五指に入る大企業スペシャリウム竹田の社長の第三息子竹田・スペシャリウム・ペコスリーが、地球にお店を開いて、たまに来る地球に住む悩み多き異星人を相手に、
特に商品を商品も勧めず、宇宙人にしかわからないような宇宙人ジョーク、宇宙人共通ネタを肴に談笑する――そんな物語である。
カラン、カラン――
第一話:女子大生田中・ケメコ・ワンコの悩み。
ドアに付いた仕掛けが店内に鳴り響く、
「あのっ、すいません、ここで異星人の悩みを解決してくれると、友人に聞いてきましたっ」
そんな慌しい突然の来店に、店長は一瞬、目をパチパチとさせて、読んでいた本を閉じ。
「やぁやぁ、よく来たね」
と一呼吸、
「立って話すのもなんだし、まぁ、とりあえず座りなよ」
と、自分のいるレジのあるカウンターの向かい側にある席を手で指し示す、
と来客に笑顔を向け返事をした。
[ありがとうございますっ]
素敵すぎるイケメン店長の微笑みに
わずかに白い頬を朱に染めながら、少しあわててイスを引き、
勢い余って引きすぎたイスに、座ろうとして、尻餅ちを付く。
「っ痛たたた……」
図らずとも小学校の名物イス引きのイタズラに限りなく近い状況を再現してしまう。これにはイケメン店長も苦笑い。
そして、当然、スカートを穿いて後ろに手を付いて尻餅をつけば下着は丸見え、破廉恥の極である。
店内には、なんともいえない静寂が漂う、
イケメン店長は即座にサッ、 と目を逸らすも、ばっちり見られてしまった来客は顔を完熟トマトのように真っ赤に染め、
「っっ、 失礼しましたー!!」
と、そう言い残しては、ビデオテープの巻き戻し再生のように、来た道を戻り第三宇宙速度で走り去ってしまった。
「…… とりあえず、この置き忘れの赤いショルダーバッグは四次元倉庫に入れておこう」
イケメン店長はどこまでもマイペースだった。
翌日の昼間。
カラン、カラン――
「あのっ、先日はすみませんでしたっ、その、昨日赤いバッグを置き忘れていたと思うのですが…… 」
と申し訳なさそうに尋ねる来客、
「ああ、昨日の方ですね、赤いショルダーバッグならちゃんとありますよ、今取り出しますね」
と、おもむろに右手を上に上げると空間が歪み、その歪みの中に手を入れては、ガサゴソと、動かす珍妙な光景が展開されるも残念ながら二人とも異星人であり異星人にとってこういった光景はごくありふれた事である。
「お、あったあった、はい、赤いショルダーバック、これですね」
と、空中からポッと赤いショルダーバックを取り出す様は稀代のマジシャンも裸足で逃げ出す珍妙さである、
がここには、異星人しかいないのでそれを珍妙に思う者は、残念ながら一人もいない、ごくありふれた事である。
「ありがとうございますっ」
バックを受け取り満面の笑顔でお礼を言う来客、
はここに来て自己紹介をしてない事に気づく。
「すいませんっ、自己紹介がまだでしたっ、私、第403(よんまるさん)宇宙連合加盟惑星:田中星の田中・ケメコ・ワンコです!」
と、異星人にとってはごくありふれた自己紹介をする。
未開惑星の地球人が聞いたら、この人あたま可笑しいと指差される単語多々あるが、宇宙連合加盟惑星出身:通称異星人しかいないこの場ではこれが普通である。
「うん、そういえば異星人交流の基本中の基本、自己紹介がまだだったね、 あらためて僕は、第7(なな)宇宙加盟惑星:竹田星の竹田・スペシャリウム・ペコスリーだよ、一応ここのお店の店長をしているよ、よろしくね」とウィンク一つ。
異星人にとって、初対面で、生まれた惑星名とフルネームを紹介するのは自分の惑星から旅立った立派な異星人としての嗜みの一つである。
コホンッと、咳払い一つして、それではさっさそく本題にと、前置きをして切り出す。
「えっと、それではケメコさん? 今日はいったいどのようなお悩みでいらしたのでしょうか?」
「ワンコでいいですよ、ケメコは結構たくさんあるファーストネームですので…… ええと、そのですね実は、お恥ずかしながら金欠が悩みでして、 地球通貨の方は貯蓄していた宇宙連合通貨を換金していたので問題はないのですが、問題は換金しすぎたのが問題といいますか、貯蓄していた宇宙連合通貨のほとんどを地球通貨に換金してしまったんです! 」
「あちゃー、未開惑星に来る方のよくあるトラブルですねーそれは、以外と知らない人が多いんですよね、宇宙連合通貨から未開惑星の通貨への換金はできても、未開惑星の通貨から宇宙連合通貨への換金はできない事を」
「そうなんです、そうなんです、私も知ったのは、ほんとに最近で、もうその時にはほとんど換金してしまっていて、いざ宇宙通販で買い物でもしようかなと思って調べてみたら、このありさまで」
と自虐的に笑って心底気落ちしてますと肩を落とす。
「なるほどねー、うんうん、だいぶ事情はわかったよ、それに丁度よかった、 このお店でいま従業員を雇おうと思っていてね、ほら、そこの窓にも張ってある求人広告」
と、窓に張ってある求人広告に指を差す。
ワンコの目線も自然と求人広告に行き読み上げる、
「求人広告…… 勤務時間応相談、仕事内容レジ、受付、募集条件……異星人、時給:宇宙連合通貨1000ゴールド、日本通貨700円、両方支給……っ」
そのあまりの好条件に声に喜色が混じっていく。
「ここで働かせてください! 今日からですか、今からですか、いつからでも大丈夫ですっ」
あまりの好条件に思わず眼がゴールドになって滑舌よく一気にまくし立てるワンコ。
日本の女子大生としてお金至上主義の荒波にもまれ日夜、ほしい物と預金残高との間に揺れ、すっかり心のそこに座りついてしまった守銭奴がひょっこり顔を出す、悩んでいた面影はすっかり消滅し、この好条件逃したら次はない! とばかりに喜色に顔を染めながら、カウンターに身を乗り出す、ワンコ現金なやつである。
「…… うん、ああ、そうだね、それじゃ出勤日とか色々決めて行こうか……」
そのあまりの勢いにマイペースのイケメン店長ペコスリーもたじたじ。
「ありがとうございますっ ええと勤務希望日は…… 、はい、はい、そんな感じで大丈夫ですっ」
と終始ワンコのペースで事は進んで行く―― 。
夏の暑い日ざしが、サンサンと照りつけるこの日、
宇宙総合デパート[スペシャリウム竹田]デリバリー支店第40337未開惑星:地球支部に、新たに新人の店員が加わった。
つづく。