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序章



 そこは、冷たい闇に閉ざされた世界だった。

 濃厚な闇はどこまでも深く虚ろに広がり、重く塗りこめるように、すべてを閉じ込めている。

「わしの決定が不服と申すか」

 怒りに満ちた太い声が、静寂の闇を切り裂き(とどろ)き渡る。

 冥界の王は、目の前に膝をつく男女に容赦のない荒い声を吐き捨てた。

 幾重にも闇を重ねた漆黒の中、(ほの)かに浮かびあがる床がある。

 太い声はその広間を震わせ、それを取り囲む闇に溶けるように消えた。

 闇の中、集まった死神たちの冷酷な視線が、王を前にした娘―――はるかに突き刺さっている。反論の声は、彼女のすぐ横からあがった。

「条件があまりにも厳しすぎます。彼女は、ただの人間だったんです」

 冥王はそう申し開く青年、ヴェルフェンに冷たい眼差しを向ける。

 玉座に悠然と背中を預ける王には圧倒的な威厳があった。まともに視線を合わせるだけでも肝が震えるほどに勇気を必要とする。

 ヴェルフェンはただまっすぐ、その眼差しを受け止めている。

 冥界の王の激しい怒り。怒気に触れるだけで消されてしまいそうだ。

 そうしてまさにいま、はるかとヴェルフェンは消されるか否かの瀬戸際にいた。

 けれど、はるかは後悔していなかった。すべてを投げうてるほど誰かに恋することが罪になるのなら、それを受け入れる覚悟はついていたから。

 たとえその相手が、自分の命を奪いに来た死神だったとしても。



 そもそもの始まりは、一年前にさかのぼる。



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