チュートリアル #4
3人はそれぞれ今の自分が使えるスキル等を確認してから、 杏奈を先頭に、朱音、トモの順番で【深淵なる森】を進む。
リーダーの位置には朱音が就いた。杏奈と朱音はトモの方が合ってるよ、とは言ってくれたが、トモ自身あまり人をまとめるという立場に立った事が少なかったから、断わった。してみたいという気持ちはあったのだけど・・・・・・。
「杏奈」
トモの前を歩いている朱音が、杏奈に向かって声を出す。
「ん〜? どうしたぁ? 」
「て、敵が出てきたら良いなさいよ? 」
朱音の声は少しだけ震えている。この【深淵なる森】は薄暗いし、そういう場所が怖いのかもしれない。
「朱音。もしかして〜怖いのかぁ? 」
「そ、そんな事ないわよっ!! 」
朱音は顔を赤くしながら言う。
「朱音。説得力ないよ、それじゃ」
「トモまで・・・・・・」
朱音ははぁ、とため息をつく。
ガサッ。
近くの叢から音が3人の耳に届く。
「きぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 」
朱音は悲鳴をあげ、自身の武器【2丁の雷煌】を手放し、その場に座り込む。
「朱音。大丈夫だから、ほら立って」
トモはそんな朱音を可愛らしいと思いながら、朱音に手を差し出す。
「お2人さーん。のんびりしている暇はないようだよぅ? 」
さっき音がしたばっかりの叢の上から、何かがこちらに向かってくるのを杏奈は確認し、トモと朱音に伝える。
「「え・・・・・・?」」
トモ達もその向かってくるモンスターを確認したが、この状況からトモの魔法の詠唱は間に合わない。
「【切・風纏】」
今までの杏奈からは考えられないほどのはっきりと力のこもった声を、トモと朱音は聞いた。
杏奈の手に収まっている大剣【鎌鼬】は、その剣身全体に風をまといながら、突然現れた人型モンスター小鬼に斬りかかる。
「・・・・・・」
杏奈は無言のまま、まだ敵がいる数10m先まで空中を跳躍する。
【鎌鼬】は小鬼の胴部分から真っ二つにする。
小鬼の姿はこちらに落ちてくることなく、切り裂かれたその場で消滅する。
杏奈はトモ達の上を通り越して、すぐ近くに着地する。
「凄いね。杏奈」
「あ、ありがと・・・・・・。杏奈・・・・・・」
朱音はまだ少しだけ声が震えている。
「パーティメンバーだからねぇ。助けるのは当たり前」