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Elysion Online  作者: 乾 碧
プロローグ
5/60

プロローグ #4

「マジか…………」

トモが外の世界に期待と不安を胸に抱き、外に飛び出して行った時、拓斗(たくと)はトモと同じように部屋に常設されている立ち鏡の前に立っていた。

しかしトモとは違う感情を持ちながら、その前に拓斗は立っている。

「…………」

拓斗は自分の身体を見る。

「女か。それもこんな…………」

拓斗の身体は、男の身体ではなく女の子の身体になっていた。それも中学1年くらいの幼い身体に。

これも【友好数字(アミカブルナンバー)の悪戯】のせいである。

拓斗は慌てて、自分の目を左端上部にやる。ログイン人数を確認するためだ。

538007人。

これが今このElysionの世界にログインしている人の数だ。

この世界を友好的にするために置かれているシステム【友好数字(アミカブルナンバー)の悪戯】は、この世界にいる人間が増えれば増えるほど、性別そして容姿を変える。早くに世界に入った人間はあまりこのシステムの影響を受けない。Elysionにおける男女比に差が無いからだ。

「53万か。多いな」

Elysion Onlineは日本で50万個、アメリカ等の主要な国で計50万個発売されている。

Elysionの時間は午後2時25分。となれば現実(リアル)では午後4時25分。まだ正式サービスが始まってから30分も経っていない。

この事柄からも、どれだけこのゲームが注目を集めていたか分かるだろう。

「どうするか……」

始めてばかりだし、する事は沢山ある。

どのゲームでは最初にやるチュートリアルと呼ばれるものが当たり前だが、このゲームにもある。ただそれは一斉に開始され、ゲーム内時間の午後3時から行われる。

まだその開始時間まで30分ほどある。

「えと、名前名前」

身体が男から女に変わってしまったんだから登録した名前も変わってるかもしれないと思い、拓斗は右手でキャラクターウインドウを呼び出す。

「ミクか…………」

ミク。これが拓斗のこの世界での名前ということになる。

「鷺ノ宮のミと拓斗のクで決められたか……。はぁ……」

これからこの姿で外に出ないと行けないと思うと、ため息しかでない。

「まぁ、でもこの姿もいいのかも」

身長は元よりかなり小さくなってしまっているし、髪型はツインテールになっていて、それは赤色のリボンでとめられている。

この姿が嫌だとしてもこれからはこの姿でやっていくしかないのだ。そう思うと、少しだけ気は楽になる。

(トモ)はどうなんだろ。男になってたりすんのかな…………」

そうなっていたら少し面白くなるかもな、とミクは思っていた。



「わわっ…………!! 」

勢いよく外に飛びたしたトモの視界の右側上部に、システムメッセージが表示される。

(シティ)【ディティ】

これが現れたシステムメッセージだ。

この場所がどこなのかが分からない、所謂初めて訪れた場所の時こういうメッセージが出ることになっている。

右も左も分からない初心者にとってはありがたいものである。

「人、多い……」

エリュシオン第一区画第一層の東半分がこの【ディティ】として当てられているが、ログインしている人数全てがここに集まっていると考えると、広いこの街でも人の姿で埋まってしまう。

実際この【ディティ】は縦45km、横38kmのとんでもない広さを誇っているため、見た感じ人は少なく見える。

「広場に行かないとダメなんだよね」

トモはキャラクターウインドウのクエストの欄をタッチし、チュートリアルを呼び出す。

「チュートリアル開始にあたり、説明を行います。トモ様は第4広場にお集まりください。ちなみに第4広場はトモ様の御自宅から右に数100mほど進んだ先にあるので、午後3時までに遅れないようにお越し下さい」

システムボイスが、直接トモの耳に届く。

「なるほど」

トモは時間を確認する。

午後2時45分。チュートリアル開始時刻まで後15分。

「ふぅ……」

……そろそろ行った方が良いかも……。

トモはそう思う。

第4広場はすぐ近い場所にあるというのは分かったし、急がなくてもいいのかもしれないが、ログイン人数が多いから、ボーッとしていると人波に飲まれるという可能性も出てくる。

「走ろ。この身体にも慣れないとだしね」

トモは軽くストレッチを始める。

慣れ、というものはこのゲームにおいて重要である。実際には自分の身体ではない作られた身体を動かさないといけないからだ。

「よしっ! 」

屈伸をしてストレッチを終わらせる。

トモは集合場所に足を踏み出した。


「はぁはぁ…………。やっと、着いた……」

午後2時55分。チュートリアル開始5分前にトモは第4広場に到着した。

「もっと、速く走れると思ったんだけどなぁ……」

肩で息をしながら、自分の胸を見る。

……胸大きいと走りにくいってのは本当だったんだ……。

クラスの女子がそう言っていた事を思い出し、トモはなるほどねと思う。

……現実(リアル)では味わえない感覚だね……。

そう思うと、この身体でいつまでもいたいと思ってしまう。


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