拓斗の日常 #5
「眼鏡をしている美樹の方が俺は好きだな。でも、無い方も可愛いと思うぞ? 」
「本当……? 」
美樹は、一旦立ち止まった。
拓斗も美樹に合わせるように、立ち止まる。
「あぁ」
「そっか……」
美樹はそう小さく声に出し、拓斗の手を離したかと思うと、今度は腕に抱きついた。
「何してんだ……。美樹……」
拓斗は、もう驚かない。何故だか、そうされる気がしたからだ。
「ん? 抱きついてるんだよ? 智ちゃんとも、よくやるでしょ? 」
「そうだけどさ……」
こう来ると分かっていた拓斗だったが、若干戸惑いをみせる。智に抱きつかれた時よりも、はるかに柔らかさが自身の腕に伝わってくるからだ。
「行くよ? たっくん」
「あぁ……」
美樹に促され、拓斗も歩を進める。
美樹の顔は、さっきよりもニコニコとしたものになっている。
それを隣で見ている拓斗の顔も自然と緩んでしまうが。
「なぁ、美樹」
「ん? どうしたの? 」
「歩きにくいんだけど…………」
離してくれないとは分かっていても、声をかけた。
「我慢だよ我慢。もう家に着くんだからさ」
美樹はそう言い、空いている手で見えてきた拓斗の家を指差す。
「はぁ……」
「ほらほら、早く行くよ」
「ただいま…………」
「おじゃましまーす」
拓斗は少し疲れた顔を浮かべながら、美樹は楽しそうな顔をしながら、家に入った。
「おかえりなさい。あら、美樹ちゃんじゃないの。久しぶりね。1週間振りくらいかしら? 」
「お久しぶりです。たっくんのお母さん。丁度1週間振りになりますね」
このやり取りを聞いて、拓斗は、そう言えばあの時は、智も含めて3人でゲームの話をしたなぁ、と思い出す。
「夏は毎日来てくれていたから、1週間も空いちゃうと……」
「そうですね。あ、たっくんのお母さん」
「何かしら……? 」
「今日泊まっていっても良いですか? 」
……やっぱり……。
美樹がそんなことを言い出すんではないか、と思っていた拓斗はそんなに驚かない。
「それは構わないけど……。明日も学校でしょう? 教科書とかは大丈夫なの? 」
「はい、それはバッチリです」
「なら、構わないわ。拓斗も良いでしょ? 」
「あ、あぁ……」
ここで拓斗が嫌だと言っても、美樹が今日家に泊まるという事項は変わらないだろう。そういうものなのである。
「今日は晩ご飯頑張っちゃうわよー」
拓斗の母は、そんなことを口にしながら扉を開け、キッチンにへと向かっていった。
「じゃ、行くか……」
「うんっ!! 」




